第19話 天野家の法事

10月、母と祖父母の家に行った。

「8月に和也くんが、来てくれた。インカレで合宿。半日、自由行動になって遊びに来てくれた。大掃除してくれてね、しんどいからいいよって言っても、一生懸命やってくれた。優しい子ね。お隣の山下さんが、イケメンでカッコイイって言ってた」

祖母が嬉しそうに話した。


祖母が16日の法事について話し始めると、母の顔色が変わった。

「斉藤さんが、法事に来るの?」

「1年も前から決まっていた事よ。強子が、とうさんに『行かない』とたったひと言で断ったから、とうさんがものすごく怒っていたわよね? 忘れたの?」

祖母が、母の顔をのぞき込んで言った。

母は、返事をせずに知らん顔していた。


家に帰ると、母は、怒りのまま電話した。

「なんで、斉藤さんがウチの法事に来るの? あの人は、他人。法事に行ってはいけない。行くと言う斉藤さんも馬鹿だけど、行くのを止めないあんたはもっと馬鹿。馬鹿がぁ。常識がない」と叔母を怒鳴りつけた。


祖母は、アルバムを綺麗に整理している。小川では、箱の中にどさっと写真が入っている。

「可愛いでしょう?」

和也が、1歳の写真だ。羽田で撮った写真、天野家の法事で撮ったものを見せてくれた。もの凄く可愛い。祖父の膝の上にいる。

他にも、和也4歳、良子2歳ふたりが、正装している法事の写真がある。

あとの写真は、和也10歳、良子8歳、岡山からと、祖母の字で書かれた写真である。親戚の人との20人の集合写真だ。

「この写真は、和くんと良子ちゃんは学校で、法事に行ったのは奈っちゃんだけだったのね」

祖父と叔母が写っている。大和ミュージアムと、書かれてある。

「週末の写真が有るわよ。真也さんが、広島の県北に連れて行ってくれた」

ワニ料理と書いてある暖簾の店の前で、祖父、斉藤家族が嬉しそうに写っていた。和也15歳、良子13歳と書いてある。


四国の法事に、兄と私は行ったことがない。母は、「奈津が四国に近いから、奈津が行けばいいと、言っていたが、斉藤家族はずっと埼玉にいたので条件はウチと一緒だと思っている。


祖父は、法事の時だけでなく斉藤家に1週間程滞在することが多かった。

祖父がいない時、母は祖母一人の家に必ず泊まりに行っていた。

母が、1週間家を空けることについて、父は何も言わなかった。


母は、祖父と一緒に法事に行きたくなかったが、義叔父が行くことで祖父が喜ぶことに腹を立てていた。


「奈津から電話が来なくなった」と、母が、怒っていた。

母は、よく叔母と長電話していたが、それが、なくなった。




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