第18話 東日本大震災

いきなり、ドンときた。ここではなく、何処かで、とてつもなく大きな地震がおきたと思った。

私は、都内の雑貨店に居た。

周囲の人々がパニックになって、知らない人どうしで喋った。

電話しても誰にも通じず、歩いた。2時間半かけて帰宅した。


家の被害は少なかったが、部屋に物が散乱していた。

テレビでは、津波の映像が流れていた。

こんな事が、こんな酷い事があるのだろうか。

この世の終わりかと思った。

撮影している人が。震えながら撮影していた。記録をしなければいけないという使命感のみでしょう、と、中継の人が言った。

「奈津が、おばあちゃんに何度も電話して、50回目でやっと繋がったって。ウチにもかけてくれた。単1電池を送って、と頼んだけど無理かなあ。茂男は、町の消防団員なのに電池持って帰ってくれない」

「持って帰る人もいると思うよ」


「可奈ちゃん、大丈夫?」

夜、良子から電話があった。大阪も、地面が波打ったと分かり驚いた。

「ゆーら、ゆーら、してね。目眩がおきているみたいだった。余震とかどう? 気をつけてね。また、電話するね」

良子からの電話に救われた思いだった。

義叔父が、親戚に頼んで単1電池8本調達してくれた。叔母が、医薬品、湿布薬、ソーラーライト、レトルトのお粥やカレー、菓子、母が頼んだ白いペンキ、電池など送ってくれた。


日本は、静かな国になった。

「被災者の人たちの事を考えましょう。楽しく騒ぐ事は控えましょう」

一方で、「被災者の人たちを元気にしましょう。前に進みましょう」と少しずつイベントも、増えてきた。


日本が、自粛生活から抜け出した頃だった。

「お母さん、山梨にもう来なくていいよ」

突然、母は兄に言われた。

母の落ち込みようは酷いものだった。

ひと月に1度、山梨に行くという、母の楽しみが奪われた。



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