第17話 兄の転勤 母の京都
2年後、兄は山梨へ転勤が決まった。
母が、元気になった。家の近くになると喜んだ。引っ越しの手伝いをする為に広島に行くことにした。帰りに、京都のお花見がしたいと京都駅近くの宿を探すよう、叔母に頼んだ。私も探したが、春休みの京都は何処も混んでいた。素泊まり2万円の部屋まで埋まっていた。
「大阪も、今混んでいるのですが、大阪に泊まるのは駄目ですか?」
義叔父から電話があった。
「なるべく駅に近いホテルをお願いします」
母が言うと、キャンセル待ちでホテルを予約してくれた。
「大叔父が京都にいたので、よく知っているんです」と、会社を休んで案内してくれた。義叔父、叔母と母の3人で、円山公園・八坂神社の桜を見て知恩院に行ったそうだ。
「お昼は、京都でお花見弁当。夕飯は、大阪で河豚料理をご馳走になった」と、母が、大はしゃぎしていた。
河豚料理店の近くに曽根崎心中のお初天神があった、と30枚の写真を見せてくれた。
「可奈ちゃんからお礼状を書いて」
「手紙を書くのは苦手よ」
母が、ササーッと書いて、私の目の前に置いた。
「これを、写したらいいわ」
「斉藤さんが、全部出してくれたの?」
「そう、もちろんホテル代だけは払ったけど。ホテルまでふたりで見送ってくれた。バスや電車賃、さっさと払ってくれるから何にもしなくていいの。食事代もね。トイレにいっているんだと思ってたら、その時にお支払いを済ませてくれたのよ。スマートよね。奈津が羨ましい」
「スイーツ、送る?」
「それは、いいわ」
母のの書いた紙を丸写しにして、お礼の手紙を出した。
兄が、山梨に赴任して月に1度、母は兄のマンションに通った。
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