第14話 それぞれの旅行

2000年、夏休み、斉藤家族はシンガポールへ行った。

その後、叔母と和也、良子が祖父母の家に来た。

ちょうど、母と私も祖父母の家にいたのでお土産をもらった。

「帰るわよ」母は、イライラしていた。

祖母にも叔母にも話をしないまま、私を急がせた。

「悔しい、絶対に、もっといい所に行く」

車の中で、ぶつぶつ言っていた。


冬休み、祖父母の家に、叔母と和也、良子が来たようだ。

お正月、母と私は、なぜか千葉のホテルで過ごした。テレビを見るくらいであまり楽しくなかった。


2001年春休み、私たち家族はニュージーランドに行った。

初めての海外旅行でわくわくしていたのに、旅行中、母は父に文句ばかり言っていた。

「玄関にビデオカメラのバッテリーを置いてあったでしょう? なんで忘れるの」

「白人にペコペコしないで。食事のオーダーでオロオロしないで」


「時々、お父さん、いなくなるでしょう? お義母さんに電話しているのよ。こそこそとね」母は嫌みっぽく言った。


初の海外旅行は、期待したほど楽しいものではなかった。


帰国して祖父母の家に行くと、叔母と和也、良子が遊びにきていた。

母が、叔母にアイスワインを渡した。和也と良子にクッキーやキャンディを渡した。みんな喜んでくれてよかった。

「ニュージーランドって何処?」和也が、叔母に尋ねた。

「どうやって調べたらいい?」叔母が、ニコニコして言った。

「おじいちゃんに、地図を借りてくるね」

和也が、トントントンと階段を上がり、良子、私もついて行った。

和也がドアを3回ノックした。

「おじいちゃん、世界地図貸して」

「おー、はい、これ」

「おじいちゃん、ありがとう」

和也が言うと、良子もありがとうと言ったので私も言った。


和也が、後ろのページを開き”さくいん”から調べた。

「すごいなあ。ここへ行ったんだ。可奈ちゃん、どこが面白かった?」

和也に聞かれて、私は母を見た。

「洞窟」母が言った。

「洞窟」私は答えた。

「あっ、そう。シンガポールも面白かったよ。ね、良子ちゃん」

「うん、面白かった。レーザーショーが綺麗で面白かった。マーライオンも見た。

おじさんの運転する、自転車の後ろのふたり席で、街中走った。ビュンビュン走って車より早かった」

「飛行機の乗り換えで3時間も待たされたけど、人が少ない空港内を走り回ったね」

「オレンジ色のライトだったね。余ったコインを使っちゃおうってキャンディ買った」和也と良子が、ずっと喋った。


「地図で、何を調べた?」

2階から下りてきた、祖父が聞いた。

「ニュージーランドが何処かわからなかったから地図で調べた」

「トルコの話をしてやるから、和也だけおいで」

「良子ちゃんと可奈ちゃんは?」

和也が言うと、祖父は何も言わずに2階へ上がった。

「帰るわよ」

母が言ったので、和也と良子にさよならした。


夏休み、父と母と私はシンガポールへ行った。

帰国して母は叔母に電話した。

「あんたらが、面白かったというから行ったのに。綺麗じゃないし、全然面白くなかった。行かなければよかった」

大きな声で、叔母を怒鳴りつけていた。


2004年、中三の夏、斉藤家はハワイに行った。同い年の和也も中三である。

祖父母の家に行った時に、母と祖母と話した。

「受験生なのにハワイなんて馬鹿じゃないの」

母が言った。

「お墓参りも兼ねてね。山口の斉藤家のお墓、ウチと天野のお墓参りもしてくれたのよ。有難い話よ。ハワイに着いて、ガイドさんが良子ちゃんを見て「あなたは、これ以上焼かない方がいいわね。テニス部なんだ。真っ黒ね」その後、「あら、お兄ちゃんはもっと真っ黒ね」ってガイドさんに言われたって。和くんは少年野球からずっと野球漬けだから芯から黒いの。始業式の後に受験生がハワイに行ったって話題になったみたい」祖母が、楽しそうに話した。

「公立の子は、受験、大変だものね」と私が言うと、

「和くんは、賢いから大丈夫よ」祖母が指で、OKサインを出して楽しそうだった。

和也は、子供の頃、とても可愛いかった。性格も明るい。

良子は、綺麗な顔立ちだ。誠実な子だ。

ふたりとも、中学校で皆に好かれていると思う。いいな。









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