第13話 祖母の思い
9月、母と祖父母の家に行った。
祖母が、「岡山の小学校の運動会を見に行った」と岡山のお土産をくれた。
和也と良子に会ってきたんだ、いいなと思った。
「埼玉の小学校の運動会は5月だったから、ふたりは2回目。和くんは3ー1のテントにいるんだけど、良子ちゃんが1ー2のテントにいないのよ。真也さんが見つけた。運動場の真ん中、特別学級の生徒の車椅子の男の子の横にいた。リボンが付いた棒を持って立っていた。良子ちゃんは、自分の種目以外、そのテントにいたの。運動会が終わった後に、奈っちゃんが先生に聞きにいったら『4月から付き添っている女子がいたけど、良子ちゃんに代わった。今後、社会科見学も付き添ってもらいます。良子ちゃんの為になりますから』だって。なんだかねえ・・・」
祖母が、心配そうに言った。
「良子ちゃんは、幼稚園の年少さんの時、○○ちゃんのお世話係もやってたね」
「あら、可奈ちゃん、よく覚えているのね」
「私の小1の時の事、おばあちゃん覚えている? 昼食で隣の子がピーマンを落としてこっちに蹴ったの。先生からティシューを渡されて『拾いなさい』、私ではありませんって言っても信じてもらえなかった。仕方なく拾った。帰って、お母さんに話したら、『あなたが馬鹿なのよ』って言われた。その子は、親戚が小学校の有力者だと自慢していたわ」
「酷いわね。強子も、ちゃんと先生に話してくれたらよかったのにね」
祖母が、「酷いわね」と、もう一度言った。
「そうそう、岡山に転校する前の埼玉の小学校でのことよ。教師が生徒に渡すのを忘れて、プールカードを良子ちゃんが13人に配ったのよ。大きなスーパーマーケットがあったでしょう? あの通りの向こう側には低学年の子は行ってはいけないルールだったのに配りに行かされたのよ。なんだかねえ・・・」また、良子の話に戻った。
「可奈ちゃんはいいわね。良子ちゃんがいて。今、遠くになったけど友だちだし、妹のような存在だものね。良子ちゃんにとってもそうよ。可奈ちゃんは、いいお友だちでお姉さんのような存在だと思うのよ。大事にしてね」と祖母は言った。
なんだかとても嬉しかった。
斉藤家族の存在は、大きかった。
義叔父は、海や山に行きましょうと誘ってくれたし、近くの公園で遊んだり、みんなで外食もした。
ウチは、家族だけで出かけることはあまりないので、斉藤家族が、引っ越してつまらなくなった。
冬休み、母と祖父母の家に行った。
祖父が、不機嫌だった。
「真也さんのお父さんが、具合が悪くて、奈っちゃんたちが、こっちに来られないのよ」祖母が、寂しそうに言った。
真也さんのお父さんは、2ヶ月後お亡くなりになった。
その年は、斉藤家の法事の関係で、良子とも会えなかった。
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