第5話 小川家と母
私の家は、東京郊外にある。
小川の祖父は、兄が1歳の時に亡くなった。
小川の祖父母は、仲がよかったそうだ。
人は、「奥さんは、ご主人を追ってすぐに逝ってしまうかも知れない」と、心配したらしい。
祖母は、90歳まで生きた。2台の車を所有し、気分でどちらかの車で出掛けた。たまに、父の独車を借りて運転していた。
大根、白菜、トマトなどの野菜を育て、カラオケ仲間に配った。
茶髪でパンチパーマ、服装もユニークだった。
小2の時、「踵が出っ張っているところ、お義母さんとそっくりで嫌い」と、母に言われた。踵を削ってしまおうと、ナイフを当てたら血が出て痛かった。踵を削ることは止めた。
父は、銀行員だった。小川の祖父が亡くなって跡を継いだ。
今は、敷地内にあるマンションの賃料収入と、フルーツの出荷が主な収入源だ。
父と母は、遠縁の紹介で結婚した。
母の故郷は、四国地方だ。サラリーマン家庭で育った母は、「小川の家で、私は嫁ではなく家政婦だった。朝、七つの神様にお供えし、1階に8部屋、2階に4部屋、トイレ3つの掃除がしんどかった。毎食の食事作りが大変だった」と、言う。
「お正月、ウチは本家なので居て欲しい」と、頼む父に、「私は、年がら年中、家政婦なのだから、年末年始は実家に帰ります」と、混む電車を乗り継いで、兄と私の3人で帰省した。新幹線は、帰省客でごった返していたのを、私も覚えている。
四国に着くと、祖父母は優しかった。ニコニコして迎えてくれた。でも、3日目になると、決まって祖父がイライラするようになった。「ワシの生活リズムが狂う」と、怒り出す。
1月3日、年末を実家で過ごした斉藤家族がやってきた。祖父母は、大喜びだ。でも、翌々日になると、祖父が怒り出した、。「うるさい、騒々しい。小川は、暇なのだから正月過ぎてから、4人で一緒に来たらいいのに。真也さんは、サラリーマンだから休日が決まっているけど、小川は、いつでも来られるじゃないか」
祖父が怒り出すと、いっぺんに家が暗くなった。
私は、兄、従弟妹と遊ぶのは楽しかったが、祖父に怒られのが嫌だった。
母は「妻の実家に、夫が来ることは、みっともなくて非常識なこと」と、言う。
父が四国に来たのは、父母の結納の日、たった、1日だけだったそうだ。
斉藤家は、いつも4人で一緒だった。
「真也さんが計画してくれて、真也さんのご両親と九州に行ったのよ。楽しかった」
祖母が、私に話した。ウチとはずいぶん違う。
四国への旅は、6歳で終わった。
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