第4話 順位付け

「今から、お前の順位付けをする」

祖父が、正座している私の前に立った。

杖で体を支えている。

「和也は、ここ」

右手の人差し指を、自分のこめかみ辺りに置いた。

「良子は、ここ」

人差し指を、胸の辺りに置いた。

「高校の教師だった人が、そんな順位付けをしていいんですか?」

私の声は、かすれていた。

「まあ、聞きなさい。秀男は、ここ」

おへそ辺りを指した。

「最後は、お前、ここ。ついでに、お前の母親は、さらに下の床下」

杖で床をガンガン突いていた。

玄関が開いた。母だ。助かった、と思ったらすぐ閉まった。

「お前、ワシの金をちょろまかすな」

祖父が、閉まったドアに向かって怒鳴った。

祖父の怒りが増したようだ。


「お前の誕生日な、和也の1週間前。3346gで生まれた。和也は小さかった。

2666gだ。秀男は、四国で9月2日に生まれた。あいつは7月に里帰りして年が明けて1月まで半年間居座った。妊娠中も出産後も、毎日毎日、小川の悪口ばかり言っていた。”離婚する”が口癖よ」

祖父が、何を言いたいのかわからなかった。

「お前ができたのは、奈津の結婚式辺り、ということ。離婚する、離婚すると言ってたあいつから生まれた、と、いうこと」

「さようなら」

足が痛かったが、立つことができた。


靴を履いて外に出た。

「どうしたの?」

祖母に聞かれたが、ひと言も話すことができなかった。

小さく手を振った。祖母も小さく手を振った。


「お母さんに、一銭も渡さないって、じいさんが言ってた。要らないって言ったら?

悔しいよ」

車の中で母に言った。

「なんでよ。相続人として、貰えるものは貰うわ」

「ビンゴゲーム機って持っている人多いのかな?」

「あんまりいないと思うよ。どうして?」

「なんでもない」

軽井沢の事は覚えていないだろう、と思った。


母は、1時間ちょっと運転して家まで送ってくれた。

母のマンションに一緒に住みたいと言った時に、「茂男が女の人をウチに入れないように見張って」と母に言われ、母の言う通りにしている。

母は、たまに帰ってくるけどマンションに居る事が多くなった。

家に着いて母にお礼を言った。母は、今から2時間かけてマンションに向かわなければならない。






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