君には笑顔が似合うから

「俺がよく窓の外を見てたのはね、天国への階段を見ていたんだよ」


窓の外を見ながら奥山くんは言った。


「え、天国への階段?」


「そう。雲の隙間から差す太陽の光のこと。花も見たことあるだろ?あれって天国への階段とか天使の梯子って呼ばれてるんだぜ」


雲の間から放射状に広がるベールのような柔らかな光。とても幻想的で美しい眺めだ。

頭の中で「天国への階段」のイントロが流れてきてもおかしくない。


「俺さ、小さい時からあれを登っていけば天国にいる人にも会えるってずっと思ってたんだ。いや、今でも思ってるかな……」


奥山くんは自分に言い聞かせるように言った。


「……」


「あっ、ごめんごめん。何かしんみりしちゃったな。えーっと、それで、あの現象って名前があるんだぜ。知ってる?」


私が顔を横に振ると、


「その名もチンダル現象!チンがダルな現象!笑っちゃうだろ?」


奥山くんがまさかまさかの下ネタを言い放つ。

私がリアクションに困ってシレッとしていると、満面の笑みを浮かべて「チンダル!」と連呼する。

あまりのくだらなさに根負けして「ぷっ!」と吹き出した。


「ほら!その笑顔」


「は?」


「花はいつも小難しい顔してばっかりだけど、笑った顔のほうが似合ってるよ」


下ネタ連呼してるかと思ったらいきなり優しい瞳でそんなこと言うなんてズルい人だ。ちょっと悔しいけどますます好きになった。

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