第20話 おっさん、反省する

「落ち着いたか?」


「ああ、すまない」


 俺はギルドにある別の部屋に通された。少し時間が経てば、俺は何をしていたんだと冷静になってくる。


「そもそも何であいつが知っているんだ?」


「それは今確認中だが、可能性としては俺達の話を盗み聞きしていたか、うちのギルドスタッフが言ったかのどちらかだな」


 ギルドスタッフには基本的に守秘義務があるため、口を滑らすことは少ないだろう。そんなことで仕事をやめるほど、この仕事をしている人達は馬鹿ではない。


「私は誰にも言ってないですよ」


 突然扉が開くとそこには剣を持ったギルドスタッフの女性がいた。


「壁が薄いから聞こえてしまったってことか」


 現に扉の前にいた女性に今の話が聞こえていた。

 ギルドにある別室は簡易的な部屋になっている。そのため、奥にある試験部屋や他の部屋に通された時に、耳が良い人なら聞こえていたのかもしれない。


 凛を探索者に登録する時も受付で行っていたため、動画配信を見ている人なら凛がアーティファクトかもしれないと気づいてもおかしくない。


「それで彼の方はどうだ?」


「違反行為に関しては認めました。ハイオークに関しては、以前からいることはわかっていたけどギルドには報告していなかったそうです」


 探索者は俺達にハイオークの誘導および擦りつけ行為を認めた。きっと今回のことがきっかけで、白色探索者以下なら資格が取り消しになるだろう。


「それとガチャから排出されたアーティファクトですが、登録者は遠藤様になっておりました」


 俺はガチャから剣が排出されてから一度も触っていない。基本的にアーティファクトは、初めに触れた人の魔力が登録されるはずだ。


「ならあの姿はアーティファクトの能力なのか?」


 探索者はアーティファクトに触れてからどこかおかしかった。少し攻撃的になっていたのも気になっていた。


「ひょっとしたらアーティファクト自体の能力じゃなくて、登録者以外の人がスキルを発動させたからじゃないか?」


「どういうことだ?」


「アーティファクトは魔力に反応してスキルが発動するのは知ってるよな?」


「ああ」


 アーティファクトのスキルは、登録してある魔力に反応すると言われている。そのため魔力があれば回数制限がなく使える。


 アーティファクトが最強の装備と言われている理由は、スキル自体が有能という以外にも壊れない限りずっと使えるからだ。


「過去にアーティファクトを他の人が使った報告がある。その時は操られたように暴れて意識を失ったと言われている」


 あの男がおかしくなったのもアーティファクトのスキルではなく、他の人の魔力を感知してアーティファクトの制御ができなくなったというのが正しいのだろう。


「それにしてもまだ俺は剣を触ってないぞ?」


「ひょっとしたらガチャ自体が特殊なのかもな。例えばガチャのハンドルを回した時には、魔力を登録しているとか」


 花田の言っていることの方が信憑性が高いだろう。あのガチャだけは特別なアーティファクトだ。誰もが使えるアーティファクトなら、魔力登録ぐらいは出来るだろう。


 俺は剣を受け取ると黒く光っていた剣が、剣先から徐々に光り輝いていく。


「これがこのアーティファクトの本当の姿ってことか」


 黒く光っていたのは俺以外の人が使った影響だろう。俺は最近買った剣を花田に渡し、アーティファクトの剣と差し替える。


「どうだ? 強そうだろう」


「相変わらず馬鹿と言っていいのかなんというか」


「凛のために強くならないといけないからな」


「私のためですか?」


 気づいた頃には凛が部屋の前まで来ていた。その手にはスマホを持っている。


「この画面が勝手に動いてどうすればいいのかわからないです」


 そういえばガチャの生配信をしたままで放置をしていた。


 スマホを受け取るといつもの倍のコメントに驚く。


 どれもが俺に対してのコメントばかりだ。今まで凛を狙う変態が集まってきていたが、どうやら俺の時代が来たらしい。


 きっとコメントが画面上に出てきてびっくりしていたのだろう。


 その姿を想像すると笑みが溢れる。

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