第58話 両親訪問
「まさか、いまさら『国家冒険者になっても駄目だ』とか言われないよな?」
「心配しすぎですよ、兄さん」
そわそわしているとセリアはクスリと笑い俺に話し掛けた。
両親の手紙を受け取ってから二週間が経過した。
王都で最大の乗合馬車場にて、俺とセリアは両親の到着を待っていた。
手紙には「おまえたちの今後について話がしたいので王都に行く」とだけ書かれていたため、俺は良くない想像をしてしまっていた。
生まれてからずっと両親と生活をしてきた。こうやって濁すのは決まって説教をする前触れだった。
「兄さんがこの半年王都で頑張ってきたのは私が見ていますから。もし反対されても絶対味方になりますから」
「それは心強い」
セリアは家族の中で母親に次いで発言力を持っている。そんな彼女が味方をしてくれるのなら一条の光が差したと言ってもよい。
昔、俺が悪戯をして両親に怒られている時も「私も一緒に謝りますから」と手を引いてくれたのを思い出した。
「ありがとうな」
元気づけようとしてくれているセリアに礼を言うと、街の外から到着したであろう馬車が停留場に停まった。
中から降りてくる人は大荷物を持っており、遠方から旅をしてきたのだということがわかる。
しばらくセリアと一緒に見ていると懐かしい顔を発見した。
「おお、セリアにクラウス。元気だったか?」
父親がトランクを持ち近付いてくる。半年しか経っていないというのに懐かしい笑顔だ。
「まあ、少し大きくなったんじゃない?」
母親も両手でバッグを持ち近付くと、俺とセリアを見て笑っていた。
「お父さん、お母さんも、元気そうでなによりです」
セリアと母親が抱き合う姿を見て、俺も父親と会話を続けた。
「見違えたな、クラウス」
眩しそうな目で俺を見る父親。その表情は嬉しそうに見えた。
「そうかな?」
そんな彼の言葉に、俺が首を傾げていると、
「冒険者として活動したからかしら、身体も鍛えられてるわ」
母親がそういった。
「このくらいの歳ならちょっと見ない間に成長するもんだ。詳しい話を聞かせてもらうぞ」
俺も父親の冒険者時代の話を聞いてみたいと思っていた。
久しぶりに会う両親との会話は心地よいのだが、ここは乗合馬車の待合場所。落ち着いて話をするのには向いていない。
「早速だけど、違う馬車に乗って移動しよう」
ひとまず家に案内した方が良い。俺の屋敷があるのはテイマー区まで馬車に乗ることにした。
「せわしないな、せっかく久しぶりの王都だというのに……」
久しぶりに来たので王都の街並みを見て回りたい希望があるのだろう、父親は残念そうな表情を浮かべた。
「しばらく滞在されるのでしょう? でしたら、まず旅の疲れを取った方がいいんじゃないですか?」
「それもそうね、あなたたちの話も聞きたいし」
不満を言う父親をセリアがなだめて母親がとりなす。いつもの光景だ。
俺たちは馬車に乗ると、これまでの間を埋めるかのように互いの近況報告を行った。
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