第51話 プチゴーレム
パープルが吐いた糸を縫い合わせて作った網を地面に広げる。
市販されている網に比べ強度もあるこれが、今回の収集には欠かせないアイテムだ。
四隅には紐があるので、これをフェニの足に引っかければ鉱山入り口まで運ぶことも容易だ。
俺は早速スカーレットダイヤの原石を収集するためマグマに近付くと、原石を集め始めた。
「ふぅ、そろそろ十分かな?」
半日が経ち、かなりの鉱石を集めることに成功した。
フェニにはすでに10回往復してもらっているので、そろそろ馬車に積める限界にきているかもしれない。
フェニも満足そうな顔をしているので、そろそろ戻ろうと思い、鉱山入り口まで引き返す。
「さて、ここからもうひと働きかな」
【スカーレットダイヤの原石】を馬車に積み込み終えると、俺は太陽剣を抜き、フェニに合図を送る。
外に出ると、大量のゴーレムが【スカーレットダイヤの原石】に惹かれ集まっていた。
今回集めた鉱石の量が多いからか、以前の十倍近いゴーレムが立ちはだかっている。
普通に考えれば、この数を相手にするのはかなり厳しいのだが、作戦は考えてきている。
「フェニは空から攪乱して一体ずつ仕留めてくれ。俺は正面から斬り伏せて行く」
『ピルルルルルルルッ!』
あの頃に比べてフェニも随分と大きくなっている。
首に【スカーレットダイヤの原石】を掛けた状態でフェニが空を飛び、ゴーレムの注意を引く。
その瞬間を見逃さず飛び出した俺は、近くにいたゴーレムを太陽剣で斬り裂いた。
「相変わらず凄い斬れ味だ」
エルダーリッチにも通用したこの剣は、ゴーレムくらいの硬度であればたやすく斬り裂くことができる。
『ピピピッ!』
上空からフェニが炎を吐くとゴーレムの身体が炭となって崩れ落ちる。
普段は周囲に気を使って自身の体温を抑えているフェニだが、本気になれば岩を一瞬で溶かす高温の炎を吐くことができるのだ。
「俺も負けてられないな……」
フェニに触発され、俺もやる気がでてきたのでのひらをゴーレムに向ける。
「【フェニックスフェザー】」
炎の羽根を広範囲にばらまきゴーレムに当てる。羽根が当たったゴーレムは動きを鈍らせた。
そのまま突っ込んでいき、剣を振るい次々にゴーレムを倒し続ける。そうなると俺を脅威と認識して一斉に襲いかかってきそうなものだが、ときおり、フェニが背後から強襲をするので、ゴーレムも俺ばかりに専念することはできない。
フェニと連携しながら危なげなくモンスターと戦い続け、気が付けば数時間でゴーレムは全滅していた。
「さて、帰るとするか」
ゴーレムの残骸を寄せて馬車が通れる道を確保してから鉱山に戻る。
後は、馬車を外に出して王都に帰るだけなのだが……。
「ん?」
ふと、視界の端に赤くキラリと輝く物が映った。
そちらを見ると薄暗い鉱山の岩の陰にスカーレットダイヤの原石を持つ小さなゴーレムの姿があった。
てのひらに乗るくらいのサイズで、俺が火山洞窟で収集してきたスカーレットダイヤの原石を大事そうに抱えている。
『…………(汗)』
俺とフェニが近付くと怯えた様子をみせ、ささっと後ろにさがるのだが、スカーレットダイヤの原石だけは手放すつもりがないようだ。
『ピィィーーーイ?』
フェニから「どうするの?」と獲物を狙うような意思が伝わってくる。
俺が許可をすればクチバシひとつでゴーレムを貫くだろう。
《【プチゴーレム】が従魔になりたそうに見ています。従魔にするには名前を付けてください》
唐突に、頭の中に女神ミューズに似た声が流れた。
「フェニ、ちょっとストップ」
予想外の事態に、俺は慌ててフェニにストップをかけた。
『ピィ?』
クチバシでツンツンとプチゴーレムを突いていたフェニは顔を上げ首を傾げる。
「どういうことなんだ?」
フェニを止めた後、俺はアゴに手を当て考える。
今、頭に流れた声の通りなら、このプチゴーレムを従魔にできるということになる。
(試してみるしかないか)
「今からお前の名前は『ロック』だ」
俺は思い浮かんだ名前を告げた。
《『ロック』との従魔契約が結ばれました。【鉱石感知(小)】を獲得しました》
クラウス:人間
性 別:男
年 齢:16歳
称 号:女神ミューズの祝福
筋 力:B
体 力:A
敏捷度:B
魔 力:C
精神力:C
幸 運:E
状 態:疲労
スキル:『孵化』
付 与:【火耐性(極)】【浄化の炎】【体力増加(中)】【自動体力回復(中)】【自己治癒(中)】【火魔法(中)】【威圧(中)】【魔力増加(中)】【魔力制御(中)】【風魔法(小)】【風耐性(小)】【鉱石感知(小)】New
テイミング:『フェニックス』『レインボーバタフライ』『プチゴーレム』New
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