第50話 Sランクアイテム『太陽杖』

「さて、今日は拾いまくるか……」


『ピィ!』


 屋敷を購入してから一週間が経過した。


 屋敷内の掃除も一通り終わったので、内装をセリアとパープルに任せている。


 俺とフェニは以前訪れた【ガルコニア鉱山】に足を運んでいた。


 目的は【スカーレットダイヤの原石】の入手である。


 前回は徒歩できたので、持ち帰ることができる量も少なかったが、今回は馬車を借りてきている。


 国家冒険者の信頼度は高く、大型馬車も通常価格の半値で簡単な手続きのみで借りることができた。


 大量に収集して、売却できない分については屋敷の倉庫にしまっておけばよいという考えだ。


 ちなみにパープルも連れて行こうか悩んだのだ、スカーレットダイヤの原石が採れる火山洞窟内部は灼熱地獄で【火耐性】を持っていなければまともに歩き回ることができないからやめておいた。


 フェニの身体が明かりとなり苦労することなく火山洞窟に到着した。


『チチチチチチチチチチチチチチチチチチチチ』


 フェニは喜びながら空を飛び、溶岩の滝に突っ込んでいく。

 気持ちよさそうな鳴き声を上げており、生物が適応できないこの場所を快適に思い楽しんでいるようだ。


「まったく、仕方ないやつだ」


 今回は収集が目的だと告げていたのだが、フェニのあの嬉しそうな姿をみると怒る気にもならない。


 これまでは、国家冒険者試験のためにやるべきことを優先してきたが、晴れて冒険者を続けられることになった今は、フェニやパープルを喜ばせることを優先する。


「まあ、その内戻ってくるだろう」


 当分の間、フェニの仕事はない。俺は【スカーレットダイヤの原石】を集め始めた。


        ★


 久しぶりにガルコニア鉱山を訪れたフェニは、溶岩の滝を満喫していた。


 フェニックスはあらゆる気温に適応できる優秀な幻獣ではあるが、その属性は火なので高温地帯を好む。


 普通の生物にとって身をただれさせる溶岩も、フェニにとってはプールのようなもの。


 フェニはこの場所を存分に楽しんでいた。


『ピイ!』


 溶岩の滝に顔を突っ込むと翼を羽ばたかせる。


 しばらくそうして遊んでいたのだが、フェニは溶岩の滝の奥へと進み始めた。


 明らかに人工物のような壁の奥に進み、奥の部屋へと入る。


 そこには多くの宝が置かれていた。


『ピッピッピ』


 機嫌よく宝を物色し始めるフェニ。


『ピピピッ!』


 そのうちの一つを気に入ると、クチバシに咥えて戻っていくのだった。


          ★


「お、やっと戻ってきたか!」


 しばらくの間、鉱石を集めているとフェニがようやく帰ってきた。


「また何か見つけてきたのか?」


『ピィピィ』


 以前と同じく、戻ってきたフェニはクチバシに何かを咥えていた。


「しかし、どこからこんなものを?」


『ピーィ?』


 フェニの目を見ても首を傾げるばかりで疑問には答えてくれないようだ。それどころかキラキラとした瞳で俺を見上げている。


「偉いぞ、フェニ」


 俺が頭を撫でてやると、フェニは気持ちよさそうに目を細めた。


『チチチチチチチチチチ』


 ひとしきりフェニの頭を撫でてやり、フェニが持ってきたアイテムを拾い上げると、


『Sランクアイテム【太陽杖】を収集しました』


「これは……」


 以前ここで手に入れた【太陽剣】と同じSランクアイテムなのだが、今度は杖のようだ。


「俺はあまり魔法は使えないんだよな……」


 フェニやパープルと従魔契約をしているお蔭で火と風の魔法を少し扱うことができるが、それにしたって威力がそこまで高くない。


「……これを売れば一気に屋敷購入金額の返済が終わったりして」


『ピィピィ』


 俺がポツリと呟くとフェニが翼をバサバサ動かし鳴いている。


 ただでさえ目立つ俺が、この上Sランクアイテムを持ち込めばどうなるか明らかだ。


 レブラントさんやマルグリッドさんの下にますます人が押し寄せ、彼らがストレスで倒れてしまいかねない。


「どちらにせよ、急を要する金に困っているわけでもないし取っておくとするか……」


 セリアが学校を卒業して宮廷魔導師になった時の御祝いに渡しても良いかもしれない。


「それじゃあ、撤収準備をするとしようか」


『ピィ!』


 俺は杖の扱いを先延ばしにすると、フェニに声を掛けた。





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