第24話 パープルとお出かけ
「しかし、こんなことしていていいのだろうか?」
セリアと会った翌日、俺は王都北門を出ると森へと出向いていた。
「とはいえ……セリアがあそこまで言うなら任せるしかないよな」
国家冒険者資格の取得のため、三人の上流階級の推薦が必要だと告げたところ、彼女に「もしかすると心当たりがあるかもしれません。絶対とは言い切れず心苦しいのですが、一週間お待ちください」言われた。
そんなわけで、王都に来て初めて暇を持て余してしまった俺は、アパートでごろごろしている気分にもならず、こうして森の探索をしているわけだ。
シュルシュルと糸が伸びてきて頬を撫でる。柔らかくも滑らかな糸は触り心地がよくて気持ちよい。
横を見ると俺の肩にはパープルが乗っていた。
テイマーギルドに預けている間に随分と大きくなったのか、今では子犬や子猫程のサイズになっており、少し重たい。
俺が手を差し出すと、甘えるように糸を絡めると自分の頭へと導く。撫でてやると嬉しそうに身体を揺さぶった。
最近はフェニの孵化やらレアアイテム収集と続いていたのであまり構ってやることができなかった。
パープルも寂しかったらしく、こうして甘えてきた。
久しぶりの森ということもあってか、俺もパープルも新鮮な気持ちで歩き回る。
途中、何度かハーブの群生地を見つけハーブを回収することができた。
王都ではハーブが購入できるということもあってか、わざわざ危険な森に入ってまで収集する冒険者もすくない。
そのお蔭で荒らされておらず、思っているよりもたくさんのハーブを手に入った。
「ドレス代程じゃないけど稼げそうだし、実家に仕送りでもしておくか」
俺はこのハーブを売ったお金をどう使うか考えながら森を歩いていると……。
『…………!?』
突然、パープルから凄い量の糸がでて動き始めた。その糸は森の奥を示した。
「こっちに、ハーブがあるのか?」
これまでにないパープルの様子に、俺はパープルが伝えたいことを確認する。
『…………!?!?』
パープルの心が伝わってくる。何やらソワソワしているような期待しているような感情のようだが、危険そうな雰囲気ではない。
俺はパープルの指示へと従い、奥へと入った。
「これは……なんて綺麗なハーブ」
鬱蒼とした森の木々の間から差し込む光、その場所に一つだけ咲いているハーブを発見した。
太陽の光を浴びキラキラと輝く、植物というよりは鉱物ではないかと思われる天然の物質。
『Bランクアイテム【クリスタルハーブ】を収集しました』
魔導具が震え、そんなメッセージが表示される。
「人目につかない場所で、こんなに綺麗なアイテムが存在していたなんてな」
Bランクアイテムと言うと【レッドドラゴンの鱗】【フェニックスの羽根】などと並ぶレアアイテムだ。
【レッドドラゴンの鱗】はとある伯爵家がレッドドラゴンをテイムしているので販売しており【フェニックスの羽根】は俺がフェニをテイムしているので手に入るのに対し、これは天然なので発見するのはかなり難しい。
そんなアイテムを見つけるとは、パープルの嗅覚はどうなっているのだろう?
当然売れば相当な金額になるのだが、セリアがパーティーに出る際のワンポイントアクセサリーに使えるかもしれない。
滅多に出ないレアアイテムなので、彼女がパーティーの華となれるのではないかと売らずにいようかと考えていると……。
『…………!!』
パープルが糸を伸ばし【クリスタルハーブ】に固執する態度を見せてきた。
「欲しいのか?」
俺はパープルに意思の確認をする。
これまで、ハーブを発見こそすれ、俺が与えるまではじっと待っていただけにこの行動は珍しいからだ。
『…………!?#$!☆』
パープルから感情が流れ込んでくる。それはとても切実で切望しており、どうしてもこの【クリスタルハーブ】を食べたいと主張していた。
「仕方ないな」
俺はすっと【クリスタルハーブ】をパープルの目の前に差し出す。
普段大人しいパープル珍しく自己主張をしたのなら、家族として叶えてやりたいからだ。
『…………♪』
【クリスタルハーブ】を糸で絡めると口元に持っていき食べ始める。非常に御機嫌なのか、身体を揺らしている様子はとても可愛らしく、俺は思わず頭を撫でた。
しばらくして、食事を終えたパープルは……。
『…………Zzz』
目を閉じて眠り始めてしまった。どうやら満腹になり眠くなってしまったようだ。
パープルの幸せそうな寝姿を見ていると思わず欠伸が出る。
「なんか、俺も眠くなってきたし、今日のところはこのくらいにしておくか……」
既に一日の稼ぎに十分な量のハーブは収集した。
俺はパープルを起こさないよう、なるべくゆっくりとした足取りで森の出口へと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます