第21話 太陽剣の威力
順調に目的のアイテムを手に入れ、坑道から出た俺の目の前に、ゴーレムが立ちはだかっていた。
高さ数メートル、岩でできた身体は硬く重いので、斬撃による攻撃はあまり効かず、打撃が有効とされている。
モンスターランクはCということで、駆け出しの冒険者は遭遇したらすぐに逃げることが推奨されてた。
「やっと、鉱山から出たと思ったらこれか……」
入る時にはいなかったのだが、どこかに隠れていたのか、それとも何かに惹かれてきたのか?
入り口を囲むように十数体のゴーレムがいることから、こいつらの目的は俺が持つ【スカーレットダイヤの原石】のようだ。
ゴーレムは他のレア鉱石を取り込むことで成長し、身体を変質させるらしい。
俺は火山洞窟からレア鉱石を持ち出したので、その気配を感じたのかもしれない。
普通、これだけの数に囲まれたら勝ち目などないのだが、今の俺には新しく手に入れた武器があった。
「フェニ、これ持って避難してもらえるか?」
俺は鉱石がたっぷり詰まったリュックをフェニに預ける。
『ピーイ!』
フェニは頷くと、両足でリュックを掴み羽ばたき、フラフラと飛びながら近くの崖上へと避難した。
ゴーレムたちの視線がそちらに向く。どうやら俺の推測は当たっていたようで、こいつらの目的は【スカーレットダイヤの原石】だ。
レア鉱石を取り込みたいという本能が勝っているからか、俺をまったく脅威に感じていないからなのか?
すべてのゴーレムは崖へと移動する。
無防備でいてくれるのなら好都合。
俺はゴーレムの背後から近づくと、先程手に入れたばかりの『太陽剣』を抜いた。
「まるで羽毛のように重さを感じない」
剣身がキラリと輝く。抜いてみた太陽剣はとても美しい剣だった。
豪華な装飾に、幾つもの宝石がが埋め込まれている。
持っているだけで凄みを感じ、斬る意思を込めると淡く輝く。
まるで武器と自分が一体となったかのような感覚を覚える。
「まずは試し斬りだから、思いっきりいってみるか」
同ランク帯のモンスターの中では飛び抜けた硬さを持つゴーレム相手に、俺の剣がどれだけ通じるかを確認する。
「ふっ!」
太陽剣がまったく重さを感じないので普段よりも速く剣を振ることができる。
「あれっ?」
ゴーレムの足めがけて横に振るったのだが、何の感触もなく降り抜けてしまった。
「もしかして間合いを間違えた?」
いや、そんなはずはない。これだけ目の前にあるのだ、目を瞑って振っても外す方が難しい。
――ズズズズズ――
何か音がする。俺が顔を上げ見てみると、
「おわああっ!」
ゴーレムがバランスを崩し倒れてきた。
咄嗟に避けた俺は、倒れているゴーレムの状態を確認する。
足が切断されており、表面がツルツルしていた。
「まさか、この剣のせい?」
今しがた放った斬撃が有効で、感触がなかったのは単に斬れ味が良すぎたからということになる。
試しに、俺はゴーレムに剣を突き立てるとゼリーにフォークを突き刺すよりも簡単に剣がゴーレムの身体に沈み込んだ。
そのまま横に動かしてみる。対して力を入れていないにも関わらず、剣はスルリとスライドし、ゴーレムの胴体を斬り裂いた。
「流石はSランクアイテム……威力が途轍もない」
Sランクアイテムは滅多に出回ることもなく、出たとしてもオークションに回されるので庶民には見る機会がない。
だからこそ、これらのアイテムは絶大な効果があるのだという。
俺がゴーレムを一体倒したことで、崖上に意識を向けていた他のゴーレムたちが一斉にこちらに振り返る。
どうやら、ようやく俺のことを脅威だと認識してくれたようだ。
「いいぞ、もっとこの剣の性能を試させてくれ」
腕を伸ばし襲い掛かってくるゴーレムに対し距離を詰め横薙ぎに払う。
そのまま横を駆け抜け、次々と腕を伸ばしてくるゴーレムの腕を斬り落とす。
重さも衝撃もほとんど感じることがなく、素振りの稽古をしているような錯覚に陥った。
「これなら、いくらでも相手ができるぞ」
これまでの道程で疲労が一切蓄積されていない。【自動体力回復(中)】の効果なのだろう。ある程度の体力の消耗であれば、少しじっとしているだけで回復してしまう。
つまり、今の俺はかなり長時間動き回ることが可能なのだ。
その優位性を活かし、剣を振り、囲まれないように動き回る。
ゴーレムたちの動きは速くなく、常に先手を取り続けることができた。
「うん、こんなものかな?」
数十分は動き回っただろうか?
気が付けばどんどん集まってきたゴーレムを倒し続けていたせいで、鉱山入り口前には崩れたゴーレムの残骸が散乱していた。
『ピーイ』
フェニがリュックを持って降りてくる。
「ありがとう、フェニ。助かったよ」
『チチチッ』
アゴを撫でてやると気持ちよさそうな声で鳴く。
俺はリュックを背負い直すと、
「これ持っていると他のゴーレムも寄ってくるかもしれない、そろそろ戻ろうか」
フェニを頭に乗せると、王都へと戻るのだった。
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