第18話 新たに得た能力
「今日からお前は『フェニ』だ」
『ピィ!』
持ち上げたフェニックスのヒナに俺はそう名前を付けた。
《『フェニ』との従魔契約が結ばれました。【火耐性(極)】【浄化の炎】【体力増加(中)】【自動体力回復(中)】【自己治癒(中)】【火魔法(中)】【威圧(中)】を獲得しました》
以前と同じく、女神ミューズに似た声が頭の中に流れる。
クラウス:人間
性 別:男
年 齢:16歳
称 号:女神ミューズの祝福
筋 力:C
体 力:B
敏捷度:C
魔 力:D
精神力:C
幸 運:G
状 態:過労
スキル:『孵化』
付 与:【魔力増加(小)】【火耐性(極)】New【浄化の炎】New【体力増加(中)】New【自動体力回復(中)】New【自己治癒(中)】New【火魔法(中)】New【威圧(中)】New
テイミング:『マジックワーム』『フェニックス』New
「随分と……色々一気に増えたな」
久しぶりにステータスを開くと、かなり変化していることがわかる。
『筋力』と『敏捷度』『魔力』『精神力』が一つランクが上がっており、『体力』に関しては一気に二段階ランクアップしていた。
フェニと従魔契約したお蔭か、付与の欄にも色々と能力が追加されている。
やはり、俺の『孵化』の能力は孵したモンスターと従魔契約を結べて、能力の一部が使用できるようになるようだ。
『ピィィィー』
甘えてくるフェニの頭を撫でながら、俺は自分の状態を見て眉根を寄せる。
状 態:過労
確かにここのところ、フェニックスの卵を孵化させるために無茶をしすぎたようだ。
「とりあえず、無事に孵化できたし今日はゆっくり休むとして……」
その前に色々試しておきたいことがある。
「使えるってことだよな?」
ステータス画面の『付与』に出ている能力について、朧げな感覚で使い方がわかる。
休む前に少し試しておきたいと考えた。
「まずは、この能力から試してみるか」
初めて使う能力に俺はワクワクしながら意識を集中する。
「【浄化の炎】」
次の瞬間、橙色の炎が俺を包み込んだ。
「優しい色してるな……それに暖かい」
視界が橙に染まりところどころがキラキラと輝いて見える。注目して見てみるとそれは何かが燃えて白光しているようだ。
「なんだか……段々身体がスッキリしてきたような?」
浄化の炎に包まれているからだろうか、先程まで感じていた不快な汗のべたつきや、頭の痒みが薄れていく。ふと、足元を見てみるとゴミがあった。
ゴミは次の瞬間、白光を放つと消え失せる。
「不浄を燃やす炎ということだな」
このような能力、聞いたことがない。しばらくして炎が収まると、俺の身体は長時間風呂に入った後の様にポカポカしており、汚れ一つ残っていなかった。
「まだ、もう少し使ってみるか……」
身綺麗になると室内の臭いが急に気になりだす。セリアの指摘の通り、ずっと部屋に籠っていたせいで臭いが溜まってしまっていたのだろう。
俺は浄化の炎を出すと、室内を綺麗にしていった。
「うん、これならゆっくり休めそうだ」
まるで、神殿のように神聖な空気が漂っている。嫌な臭いは消え、香を炊いたような良い香りが漂っている。
「もう少しだけ、頑張ってみるかな?」
浄化の炎が素晴らしい能力だったお蔭で、他の能力についても試してみたくなる。
俺は暖炉を見た。薪が積んであり直ぐにでも暖を取ることができる状態になっている。
何気なく右手を前に出し、力を込めると目の前に魔法による火が発生した。
「これが、魔法を使う感覚なのか……。セリアの気持ちがわかるな」
実家で、風呂に水を入れる際、彼女に「面倒ではないのか?」と聞いたことがあるが「魔法は使う程に上達しますし、無から何かを生み出すのは楽しいですよ?」と返事をもらった。
自然の一部を操るというのは普通の人間にはできないこと。魔法の万能感に意識が高揚していく。
思わず、どこまで威力を高められるのか興味がわいたのだが……。
「おっと……こんなところで放ったらまずいよな」
俺は暖炉へと近付き、作り出した火で薪を燃やした。
すこしして、魔法の火が燃え移り、薪がパチパチと爆ぜる。
ある程度強い火になったところで、俺は暖炉に手を突っ込んでみた。
「本当にまったく熱く感じないな……」
【火耐性(極)】の効果なのだろう。今の俺は相当な高温にも耐えられるようになっている。火の揺らぎが指に触れるのはわかるのだが、それ以外に熱さも寒さも感じることはない。
『ピイッ』
俺が得た能力についての検証を終えると、フェニが走ってきて暖炉へと飛び込んだ。
『ピーイーイー』
薪の上でゴロゴロと転がり気持ちよさそうな鳴き声を上げている。
フェニックスは火属性の幻獣ということで、火を浴びるのは心地よいのだろう。
「苦労した甲斐があった……、これでようやく先に進めるな」
フェニの頭を撫でていると猛烈に眠気が押し寄せてくる。
無理もない。過労の状態で浄化の炎に加えて火魔法も使ってしまったのだ。
「とりあえず……この後のことは……起きたら考えるとして……」
資格試験についてはまだ間に合うはず。そんなことを考えながら、俺は意識を手放すのだった。
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