第4話 冒険者登録
「ここが……冒険者ギルドか……」
俺は緊張しながら、冒険者ギルドのドアを潜る。
なにせ、冒険者とは荒事に特化した仕事をこなす人間を指すからだ。
モンスターの討伐や素材の収集など、一般人ではできないことを請け負う代わりに高額の報酬を得ることができる。
困窮している家の借金を帳消しにして、セリアを王都に留学させるためにはもはやこの方法しかなかった。
ドアを潜ると、何人かがこちらを見てくる。いずれも眼光が鋭く、街で暮らしている一般人とは気配が違っている。
俺は見られていることに緊張しながら、受付を訪ねた。
「すみません、冒険者登録をしたいんですけど」
「はい……あなたが、ですか?」
「ええ、そうですけど?」
受付の女性は俺の格好を観察する。
「その装備、サイズがあっていないようですけど?」
俺が身に着けている剣と鎧は、昔親父が冒険者をしていた時に身に着けていたものだ。家の納屋にしまってあったのを引っ張り出してきたのだが、昔の親父は体格が良かったらしく、若干ぶかぶかだったりする。
「これは……親から借りたものなので……」
俺が言い訳をしていると、
「なんでぇ、装備も揃えられないルーキーが冒険者登録するのかよ?」
後ろから声を掛けられた。
「ジークさん、新人いびりは止めておいてくださいね?」
「おいおい、本当のことを言っただけだろ」
ジークは高そうな剣と鎧を身に着けた二十歳くらいの男だった。
明らかにベテランな冒険者のジークに絡まれ、俺がどうしてよいかわからずにいると……。
「これから説明をするので、他に用件がなければ下がってください」
受付の女性がジークに煙たそうにそう注意をする。
「はいはい、それじゃ、俺たちは依頼に出るからよ」
そう言ってジークは手をひらひらさせると、俺をあざわらいながら仲間とともに出ていく。
「それでは、こちらの書類に記入をお願いしますね」
すっと差し出されたのは、冒険者登録をする上で必要な書類だった。
氏名・担当ポジション・技能などを書いていく。
担当ポジションとは、いざパーティーを組むメンバーを探す時に役立つ。お互いの役割が被らないようにしなければならないので重要だ。
技能に関しては特に書くこともない。魔力が高く使える魔法があればその種類を書けばよいし、剣が得意でスキルを使えるのなら書けばよいのだが、俺にはそのようなものはない。
確かに『孵化』というスキルもあるのだが、これは現段階で書いたところで変な目で見られるだけだろう。
なにせ、放っておけば自然に孵化する卵を強制的に孵すことができるだけという微妙に使い勝手が悪い能力だからだ。
「書き終わりました」
俺は、サラサラとペンをはしらせ書類を埋めると、受付の女性に返す。
「クラウス……さん、担当ポジションは前衛……武器は剣のようですから、剣士でしょうか?」
「ええ、そうなります」
一応、子供のころから父親に剣術を習っていたし、筋力・体力・敏捷度はステータスで確認したところEだった。
一般人の平均がFなので、俺が冒険者としてやれるとすれば前衛しかない。
「前衛は割と余ってまして……直ぐにパーティーを組めるかはわかりませんよ?」
「そうですか、でも、直ぐに仕事を請けることはできますよね?」
魔法などが使える人間は希少なので、どうしても前衛で身を立てる人間が多いと聞く。
「ええ、単独での依頼もありますが、ゴブリン狩りやハーブの収集という常設のみになってしまいますけど……」
「それでも大丈夫です!」
今はとにかく金が欲しい。パーティーを組むまでじっと待っていられないのだ。
「わかりました、それでは説明をさせていただきます――」
俺がそう促すと、受付の女性は冒険者ギルドの説明を始めた。
冒険者ランクは全部で8段階あってSが最高でGが最低となっている。この8段階は「ステータス」の魔法とランクを統一しているらしく、ステータスで表示されている文字が冒険者としての適性ランクとなっているらしい。
その判断によると、俺は現時点でEランク相当の冒険者という扱いになりそうだ。
一通りの説明を聞き終え、
「何か質問はありますか?」
「この、常設の依頼って上限はあるんですか?」
「いえ、ゴブリンは間引かないと農場や村に被害を出すモンスターですし、ハーブはポーションの材料になりますので買い取りに上限はありません」
討伐の報酬も収集の報酬もそれぞれ1つあたりで俺が普通に一日働く金額と同じだ。もし大量にこなすことができるのなら、かなりの収入が見込めるのではないか?
「ただ、ゴブリンは平原を歩き回っても一日に数匹見つかるかどうかですし、ハーブも数は多くありません。冒険者さんの中には、自生している場所を秘匿していて、他の依頼のついでに摘んでくる人もいるとか……」
報酬が高いのには理由があるようだ。ポーションの需要は高く、作れば作るほど売れるので、現状ハーブがまったく足りていないということらしい。
俺は借金を返済できるかもしれないと希望を持つと、
「わかりました。早速行ってきます」
両親とセリアに報いるため、街を出て森へと向かうのだった。
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