視えてない自称霊能力者と視えてる一般人
以前、とある撮影で都内のあるビルへ行った。
そのビルで前回まで撮影した時には色々と心霊現象が起こり、撮影が難航したと聞いていた。
聞いたところによると、カメラが突然動かなくなったなどの定番どころから、このシーンに居たはずの出演者が映像からは消えていた、逆にまだ来ていなかったはずの出演者が映像に映り込んでいたなんていうことまで、普通では起こりえない出来事が多数記録に残ってしまった。
そのため、今回の撮影には霊能力者という人に来ていただいてお祓いをしてもらうこととなった。
来ていただいたのは40代くらいの女性で、いかにもなアイテムを色々と持ってきていた。
部屋に入ると確かに奥の方に何体かの霊がいるのが視えた。
霊能力者の女性が語り出した。
「この、入口横にいる霊は男性でこの場所に恨みがなんちゃらかんちゃら、トイレの前にいるこの男性の霊はなんちゃらかんちゃらでこの場所から離れることが出来ず…」
実はこの日、私ともう一人霊感のある出演者がいた。
二人で「霊がいるの、奥だよね?あと強いのは女性の霊だし、この場所に恨みっていうか、行き場がなくここに溜まってきちゃったっていう感じだよね」と二人の間で詳細の答え合わせを行っていた。
霊能力者は数珠を出し、聞いたこともないお経と祝詞をまぜこぜにしたような何かを述べて、こういう未練の強い悪霊には塩が一番効くといい、スーパーの値札が貼られたままの伯方の塩を出して部屋の入口に向かって撒いていた。
霊能力者の背後からは、この部屋にいた霊たちが不思議そうな顔をしてこの霊能力者を観察していた。
その霊に呼ばれる形となったのか、霊能力者を観察しに、どんどん霊が集まってきた。
そんなタイミングで霊能力者が顔を真っ青にしながら「霊は全て祓われました。もう安心です」といい、そそくさと帰り支度をして帰っていった。
集まってきた霊たちは、変わった者をみれた満足感からか、徐々に元いた場所へと帰っていった。
この日、霊たちからしたら「動物園で初めて見る生き物に興味津々な子供たち」のような心境だったのではないかと推測する。
そして自称霊能力者の凄さに感嘆した私ともう一人の霊感ある出演者、二人で霊の戻っていった場所に「今日ここを使わせてもらいます、よろしくお願いします」と軽く一礼して、無事に撮影を行った。
この日、何も不思議な事が起こらなかったのは、自称霊能力者を見る事で霊が満足したのか、我々二人の一礼の賜物だったのかは今となってはわからない。
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