二度と行かないだろう

週末にラブホテル難民になった事がある。

まあ、しょうがない事だ、需要と供給が常にいいバランスになるなんて事は難しい。

それでもどこか一軒くらいは空きがあるだろうと探した結果、なんとか見つけることができた。

しかし、かなり癖の強いところだった。

部屋がラブホテルというよりかは完全に寂れた田舎の旅館、しかも個人営業で廃業間近みたいなところだった。

でもそれはそれで面白かった。

「なんだよこれ、今どきこんなの見たことないよ」なんて一頻り盛り上がったが、その部屋に不備があった。

大したことではないが、そうはいえこの感じで眠りにつくのはなという感じであった。

フロントに電話するとすぐに替えの部屋を用意致しますと言われ、すぐに案内された。


そちらの部屋もとにかくレトロで、掛け布団なんて縮緬の布団だったりする様子。

ただ、こちらの部屋でいよいよおかしなものを見てしまった。

部屋に入って正面に般若の面があったが、その後見たら無くなっていた。

さらに、鬼の様な顔を一瞬だがはっきり見てしまった。


部屋に入ったのがもう明け方だった事もあり、その後仕事だったためそろそろ出なきゃと提案したが、連れの女はもう少し寝ていくと言っていた。

私はそそくさと準備をし、部屋を後にした。

もう二度と来ることはないだろうと思いながら。


そこから2ヶ月もしないうちに、そのラブホテルが火災で焼け落ちた。

あの日見た般若と鬼がなにか関係しているのだろうか。

だとしても般若は本来悪い意味で使われるものでもないと思ったが。

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