Y氏に視えるもの

Y氏は一時期バーで霊視しますというイベントを行っていた。

大体こんなのは何を言っても胡散臭がられるものである。


ある日、視てもらいたいというバンドマンがやってきた。

依頼は自分を守ってくれている人はどんな人でしょうかという、まあ、興味本位の内容である。

Y氏が視ると、30歳になろう男性に憑いているには少し不似合いな、可愛らしい笑顔の中学生くらいの女の子がいた。

まあ、バンドマンだしもしかしたらファンか何かかとも思ったが、その笑顔が憧れや崇拝といった表情ではなかったので少し気になって、その女の子から少し話を聞き、それから彼にその女の子のことを伝えた。

大まかな年齢、髪型、服装、そこまで伝えた時点で彼は「やっぱり…」と言った。

彼からその女の子は中学の頃に付き合っていた女の子であること、高校に上がる前に亡くなられたこと、未だにその子の事が忘れられないとこなど、涙を流しながら話していた。

Y氏からするとその事はもう彼女の方から聞いていたので、今の彼女の気持ちを伝えてあげた。

「もう忘れて新しい道に進んで」

彼は崩れそうになりながらも、でも彼女のその想いを汲んだ上で前に進むことを約束してくれた。


胡散臭いような事でも、そこにちゃんと真実がある事も、未来を創っていくこともあるんだと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る