初めてのエンカウント
私が初めて幽霊と遭遇した日の事を語ろうと思う。
神奈川の田舎の方で母と二人で暮らしていた中学生だった時の事である。
6月だったか7月だったのかはあまり覚えていないが、穏やかな休日に畳で昼寝していたときである。
隣の部屋は母の部屋で、襖で区切られてはいたが、明け放てば見通しがいい。
とはいえ普段は閉めており、また、がっつり昼寝しようと思っていたので眼鏡も外していた。
ふと目が覚めた。
意識がやけにはっきりしている。
眼鏡を外していると裸眼で視力0.3もない当時の私は、本来何もかもがぼやっとしか見えないはずである。
にも関わらず部屋の隅までやけにくっきりと見えた。
隣の部屋の畳の目まで数えられるほどに。
いや、襖は閉まっているのだ、それはわかるのに、隣の部屋の様子までくっきりと見える。
そんな時、壁からウェディングドレスドレスを着てヴェールを下ろした女性が入ってきた。
ドレスだからか、足が動いていたのかはわからない。
ただ、滑るようにすーっと女性が移動している。
そしてそのまま反対の壁をすり抜けて消えていった。
普通ならここで恐怖するんだろうけど、当時の私はその女性の美しさに見惚れていた。
きっと、挙式を前にしてこの世を去られたのではないか、そして、今日の日付がその挙式の日だったのではないか、そう気付いたのはもう少し大人になってからだった。
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