生霊に睨まれる
ある年の夏、芸人をやっている友人がバーを借り切って百物語のイベントをやった。
私もかなり遅い時間からではあったが顔を出しに行った。
彼の語る怪談は、結構ありがちな、どこかで聞いたことのあるような話が多かったが、私を含めお客さんも和やかに楽しんでいた。
ただ、来た時からなのだが、一つだけすごい気になることがあった。
お店の棚から女の生霊と思われる顔がずっと芸人の事をじっとりした目で見つめているのである。
いい時間となり、お開きにするかとなった頃合に、彼にそっと見つめてる女がいるとこを伝えた。
彼は顔色を変え「多分今の彼女だ。束縛が酷い」と言っていた。
また、その生霊の顔に気付いた私の事もすごい睨みつけていたが、その事は彼には伏せておいた。
後日、芸人の彼と会った時に私をみつけて彼が急いでやってきた。
百物語が終わって帰ったら、彼女から「私のことを見ていた男は誰なの?なんなのあいつ」と言われたと。
「ずっと私の事を見てるから睨み返してやった」と言っていたそうだ。
無自覚に生霊を飛ばしてしまう人と違い、意図して生霊飛ばす人はその場の事をちゃんと認知できてしまうのだと知った日だった。
ちなみに彼はすぐにその生霊女とは別れたそうだ。
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