Day7 洒涙雨

 七夕伝説のふたり。織姫のベガと彦星のアルタイル。引き裂かれたふたつの星の距離は十四光年。

 十四年かかる距離を一日で移動するなんて、ふつうに考えたら不可能だよね。カササギだっていったいどれだけの数が必要になるのだか。

 それを可能にするのは愛の力か、神の奇跡か——なんて、アホらしい。

 ふたりが逢瀬のあとに流す惜別の涙とも、逢瀬が叶わなかった悲しみの涙ともいわれている七夕の雨にしたってそうだ。

 その日に雨が多いのは単に梅雨の季節だからだし、そもそも星が逢引なんてしない。


 一か月ぶりのデート。メッセージひとつですまされたドタキャンは雨のせい。そういうことにしてあげた。

 ほんとうは知っている心変わり。見ないふりをしているだけ。

 時間のムダだよ。さっさと別れなよ。心の声にも耳をふさいできたけれど。

 そろそろ引き際かな。

 わたしには、十四光年を飛び越えるような情熱もないしね。


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