第57話(前編)ホワイトデーは考えたら負け
3月14日――――
1か月前であるバレンタインに対する商業の匂いがプンプンするイベントである。友チョコの実験台にされた挙句、お返しを要求した姉妹のことは忘れていない……というか、現在進行形で要求されている。
今は、来たる日の数日前。
「はぁ……」
「おいどうしたよ親友ぅ」
「ホワイトデーのお返しをね……って、なにしてんの?」
スマホをスイスイと滑らせる永井の視線は上から下へ動いている。
「いっぱいもらったからな、できるだけコスパの良い感じに返していかないと……!」
「それって嵐山さんも入ってるの?」
「おめっ、嵐子さんは別だろうがよぉっ!」
知らんがな。
いっぱいもらえるのも考えものである。
「それに、返すのもちゃんと考えないといけないんだぜぇ?」
「え、なにそれ」
「最近はお返しのプレゼントにも意味があるからな」
知らんがなpart2。
今時の人間はそこまで考慮しなきゃならんのか。おのれチョコレートの会社、なんたる面倒か!
「ん…………もしかしてそれって、バレンタインの時も適用?」
「うぇ? …………まぁ、そうじゃね? 大抵はチョコレートだからそんなに深い意味はないと思うけどな」
…………大抵は、ですか永井君。
「おぅ、なんだ? 部長さんからなに貰ったんだよ色男」
「いやこれは罠だ!」
「どうした急に」
これは先輩による罠だ!
意味を調べさせて悶えさせようとかその類のトラップだ。意味を知ったたところでからかってきそうだ。
決して調べてはいけない。
でも調べないと先輩の真意は分からない。どちらに動いても翻弄されていることに違いない。
ボクが貰ったのは色とりどりのマカロンだった。
ちなみに美味しかったです。
せっかくもらった贈り物、何も考えず純粋にお返しするのは問題ないんだけど……それはそれで違う気がする。
「おーい……大丈夫かぁ?」
「大丈夫じゃない!」
「そ、そっか……まぁ頑張れ」
どうしてこう、先輩はボクの情緒を乱すのに慣れているんだ?
1年近く身近にいれば扱いも上手くなる……のだろうか?
いや……最初から変わらない気もする。
そっか……もう1年くらいは一緒にいるんだなぁ。
いる割に、あまり先輩のこと分かってないような。
ひとまず、先輩から渡された物について授業前に調べてみよう。
「『バレンタインデー 贈り物 意味』っと」
検索すれば簡単にヒットする。
チョコ、クッキー、アメ、マシュマロ……など、色んなお菓子があるが、お目当ての名前もきっちり載っている。
――マカロン。
『あなたは特別な人』
「これは……むしろどういう意味???」
裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏くらい読んでも無駄だろうけど……
う~ん……余計に分からなくなってきた。
何をあげたらいいんだろう。
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