第3話 金髪ツインテール=ツン(デレ)の方程式


「……悪いけど私、そういうの興味ないんで」


 校舎裏での告白劇を影から見守るボクと先輩。創作の為の取材とかなんとか……


 パーマヘアのサッカー部男子から告白を受けているのは、ボクの同級生である志麻しまさんである。金髪のツインテールが目印で、同学年でもとびきりかわいい女子だ。昨日に続き、今日も呼び出されて告白されている。


(人気者だねぇ)

(先輩だって前はよく呼ばれたんじゃ?)

(いつでもワンコールで電話に出て5分以内に来るなら付き合う条件を出すと、なぜだかみんな断るんだよねぇ)


 付き合う気ないな、この人。

 ちなみにボクは電話番号を教えていないのに掛かってくる。個人情報とは?


「じゃあ、さよなら」


 志麻さんは素っ気なく振るとボクらの方へ戻ってきた。

 振られた男子は地面に四つん這いになってうなだれていた。ドンマイ。


「モテモテだねぇ」

「時間の無駄だったわー」


 いかにも退屈そうに志麻さんは右テールを弄る。アイドル顔負けの整った顔立ちが、なんでもない仕草でも様になる。


「こんなのが小説? ……の参考になるの?」

「ま、まぁ先輩の考えることは理解不能なんで……」


 恋愛についての取材らしいけど、これは恋愛が始まる以前の話ではないだろうか。それに、志麻さん誰にでもツンケンしているから恋に発展するとは……


「おーい、志麻ぁー!」

「ぁ……」

「新田くんだ」

「文芸部じゃん、お疲れ~っす」


 背後から志麻さんを呼んだのは、これまた同級生の新田にったくんだった。短髪爽やか高身長、清潔感の権化である。


「な、なんであんたがここにいるのよ!?」

「なんでって……今日の帰りに買い物付き合えって言ったのお前じゃん」


 おや……? おやおや……?

 隣の先輩がとても嬉しそうに二人を眺めている。


「そういや、サッカー部の奴が今日お前に告るって言ってたけど」

「断ったわよ」

「もったいな……そのうち本性バレるぞぉ」

「うっさいわねー、相っ変わらずお節介」


 ……おぉ? これは……

 サッカー部男子くんには悪いけど、こりゃどう見ても脈無しだよ。


「まぁちょうどいいわ、買い物行くわよ。先輩、もう行きますね」

「あぁ、ありがとう。楽しいデートになることを祈るよ」

「そ、そんなんじゃありません‼」


 足踏み強く志麻さんが遠のいていく。呆気に取られた新田くんはなんともいえない顔をしていた。


「新田っ、早く行くわよ!」

「なにキレてんだあいつ……じゃあ、俺もいくわ」

「おつかれ~」


 頭をポリポリと搔きながら、新田くんも志麻さんの後を追う。志麻さんはなにやらぷんぷんと豊かに感情をぶつけていた。


「先輩、ちょっと胃もたれが」

「奇遇だねぇ……夕飯は消化にいいものが食べたいなァ」


 短時間にラブコメ成分を吸収してしまい、ボクらには栄養過多だったようだ……先輩は満足げだけど。


「どうして金髪ツインテールの子はツンツンするんだろうねぇ」

「さぁ、なんでなんでしょう?」


 世界の謎としておこう。


 金髪のツインテール娘は、かわいいけれど素直じゃない。ツンとデレを内包している……この知識は、なぜかぼんやりと、しかし確実に脳内に保管されているのだ。

 



 そう、ボクらはカタにハマってる。

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