第030話 出発の朝
出発までの30日は特に大きな問題もなく平穏に過ぎて行った。
修行も最終的にはフィエールさんも交じることで4対1という形で励んでいた。
それでも軽く相手に出来る師匠はやはり化け物だろう。
自警団の見回りでは妖怪達の姿を見なくなり二道の民が東瀬市周辺から手を引いたのは本当の様だった。
俺・彩奈・フィエールさんの3人で第1回料理対決という企画が開かれた際には気絶者が出たがそれは別の話である。
「おはよう、結。」
出発の朝、俺は結に出発の挨拶をしていた。
「学武国家エクレシームに行ってくるよ。しばらく帰って来れないけど怒らないでくれよ?」
「・・・。」
「じゃあ、行ってくる。」
結を避難所に残し結界境界線前で待っている冬也達と合流する。
「もう良かったの?」
「あぁ、冬也も顔を出せばよかっただろ?」
「家族水入らずを邪魔するほど無粋じゃないよ。帰って来た時にね?」
冬也の気遣いに感謝しつつ師匠に質問をぶつけることにした。
「師匠はこれからどうするんですか?」
「やっと子供のおもりが終わったところだしな。聖都の方にでもブラブラしてみるか。」
やはり師匠とはここで別れることになるのか。
正直な話、師匠がそばに居たら心強いけど引き留めることは出来ない。
約1年今日まで俺達に付き合ってくれたのだから・・・。
「互いに生きていればそのうち会えるだろ。その時は本気で相手してやるから怠けるなよ?」
「師匠こそ!」
「「・・・プッ、ププ、あはははは!」」
俺と師匠の笑い声が響く。
「ありがとうございました。行ってきます!」
「あぁ、またな。」
こうして師匠と別れた俺達は学武国家エクレシームを目指し新たな世界へと旅立っていった。
◇
聖都へ続く光の壁を目指して一人歩くルーザァの前に銀髪の少女が現れる。
「ご苦労様、ちゃんとお願いを聞いてくれたから助かったわ。」
「チトリ。」
チトリと呼ばれる銀髪の少女は胸の前で指を組んで喜んでいる。
「継達を強くして何を企んでいる?」
「企んでいるなんて人聞き悪いわ。彼が『鍵』なのはあなたも知っているでしょう?」
「・・・。」
「で、あなたから見て彼らはどうなの?」
目を輝かせながら質問してくるチトリをうっとおしく思うルーザァは素直に話すべきか迷うがこのまま付いて来られても邪魔なだけなので教えることにした。
「継と冬也の成長は異常だ。本来の成長スピードから逸脱している。後の二人は才能による成長だろう。」
「そうなの。」
満足そうにクスクスとチトリは笑う。
「貸しだからな、用が無いならもう行くぞ。」
「あぁ、待って。一つ聞きたい事があるのだけれど。」
去ろうとするルーザァの背中を呼び止める。
「あなたが彷徨っているのはユライトの敵を取るため?」
「あぁ、必ず見つけ出して殺す。」
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