第023話 東瀬市について

 弩弓を設置した翌日も俺達は自警団に呼び出されていた。


「度々済まないがこれを見てくれ。」


 代表が申し訳なさそうに机の上にあった資料を俺達に渡す。


「北の東瀬川神社、南の日奉神社、東の穏奉寺のことが書かれているね。」


「初詣以外ではあまり寄る機会が無い場所ばかりかな。」


 彩奈と同じで俺も大晦日の夜に結と冬也の3人で初詣する以外近寄らない場所だ。

 しかし、昨日の今日で3カ所の資料が渡されるという事は・・・。


「東瀬川神社と日奉寺にも祠があったんですね?」


「あぁ、すでに破壊された後だった。資料を見てくれれば分かるが破壊された祠からは今までの比にならない量の瘴気が溢れ出ている。」


 資料を捲るとインスタントカメラの写真が貼られていた。

 写真には10人掛かりで瘴気を抑えるエルフの姿が写っている。


「エルフの里への協力要請は?」


「すでに向かってもらっている。本来ならフィエールに一言声を掛けるべきだったが事態が事態なので勝手に進めさせてもらった。すまない。」


 謝罪する代表にフィエールさんは「緊急事態なので構いません。」と首を振る。


「君たちはこれをどう見る?」


「同一犯ではないでしょうか。」


 確証は無いが西部の森の祠と2カ所の祠を破壊した人物はおそらく同じ。


「仮に犯人が同じとして何のために破壊している?」


「それは僕の推測でよければお話しします。」


 前に出た冬也が俺に顔を向けて「良いかな?」と許可を求めたので頷き任せることにした。


「結論からすると何かを探しているのだと思います。妖怪が初めて目撃されたのはエルフが見回りをしている西部の山だったそうです。妖怪達は祠に封印されていましたが何者かによって封印は解かれ最終的にはエルフの里を襲いました。」


 俺と冬也が師匠の気まぐれで西部の山に向かった時に出会ったエルフ達が『正体不明の魔物』がいたと言っていたな。


「そして、継が戦った天狗という妖怪は『人間は我々の敵だ、それに与する者達には死を。』と言っていたそうです。」


 天狗に「なぜエルフの里を襲うのか。」と質問したらそう答えていた。


「それで僕は考えていたんです。エルフに恨みがある者が妖怪を襲わせたのかもしれないと。ですが、それは違うとすぐに考えを改めました。」


「なぜだ?」


「エルフの里が襲われてからそれほど日が経っていませんが西部で新たに妖怪が目撃されず東瀬周辺に現れたからです。」


 妖怪の存在や祠の封印の事がバレた以上距離が離れ冒険者たちも出入りしている東瀬市からエルフの里を襲うのも変な話だ。


「それと資料を見て確信しました。人間を襲う事も本来の目的とは違うと思います。もし人間を襲う事が目的ならわざわざ西部の山に行かずとも街にある祠を破壊すればいいだけですから。」


「確かにな。では、何者かが探している物が分かれば先回りして捕まえられるということだな。」


「えぇ、おそらく。」


 手がかりか・・・。


 天狗と戦っているときに見えた映像を思い出す。

 あれはきっと何百年も前の過去の記憶だ。


 街にあった祠から妖怪が現れたのならば街だけに伝わる伝承や記録が東瀬の何処に眠っているはずだ。

 それを探し出せればきっと何かわかるはずだ。


 自警団の天幕を出た俺達は情報収集するため初めに東瀬市立図書館に向かった。

 東瀬市立図書館に到着すると所々窓ガラスは割れ落ち辺りは人気のない静かさに包まれていた。


「当たり前だけど誰も居ない図書館って静かだね。」


「周囲に気を配りながら進もう。」


 魔物を警戒しつつ俺と彩奈が1階、冬也とフィエールさんが2階と分かれて館内を回りながら東瀬市についての情報と妖怪についての本を集める。

 1階を回り終わった俺と彩奈は集めた本を読むが基本的な事しか分からなかった。


 平成に書かれた本によると東瀬市域の人口は約6万5千人。

 農地と工業地帯4割を占めている。


 東瀬市域に最初の人類が現れたのは東瀬市域の遺跡の調査で約2万年前だとわかった。

 また、東瀬という地域の由来は『東にある流れが速く浅い場所』という意味らしい。


 伝説としては大昔、都に住む男性がこの地に住む身分違いの女性と恋に落ち何かと理由を付けては川で逢瀬を重ねていたという話があった。


「約2万年前に東瀬に人類が存在していたなんて知らなかったわ。」


 彩奈は本を読んでいる俺の横から顔を出して関心を持つ。


「俺も驚いた。歴史の授業で紀元前~年とか聞くけどここまで昔だと全然実感が湧かないな。」


「そうだね。」


 彩奈がクスリと笑う。


「二人とも驚くにはまだ早いよ。東京都には3万5千年前の最古級の石器が出土している遺跡だってあるんだから。」


 振り向くと2階を見終わった冬也とフィエールさんが戻ってきていた。

 よく見るとフィエールさんの手にはポスターらしき物が握られている。


 それにしてもそんな昔の石器が見つかっていたのか。


「ただいま戻りました。」


「お帰りフィエール。何か異常はなかった?」


「えぇ、特には。」


 互いに館内の異常がなかった事を知らせて本題に戻る。


「1階で探してみただけど東瀬についての基礎的な事は分かったが肝心な妖怪に繋がりそうな情報は特になかったな。」


 俺の言葉に彩奈も頷く。


「こっちも探したけどそれらしい本がなかったよ。だからさ、ここへ行ってみない?」


 フィエールさんが手に持っていたポスターを広げて見せるとそこには遺跡の写真と東瀬市郷土博物館特別展と書かれていた。


「ここなら東瀬に関する本や郷土史、それに伝承が書かれた古文書があるはずだよ。」


 なるほどな、郷土博物館か。

 さすが冬也。


 郷土博物館があること自体は知っていたがポスターを見るまで存在を忘れていた。

 一度も行った事は無いがここなら東瀬に関する記録が集まっている可能性が高い。


 行ってみる価値はある。


「継くん、ここに居てもしょうがないから行ってみない?」


「そうだな。行ってみるか!」


 新たな目的地が決まった俺達は図書館を出て東瀬市郷土博物館へと向かった。


 東瀬市郷土博物館。

 東瀬市の自然を再現した四季に花咲く木々に囲まれたシルバーグレーの建物。


 館内は1階に歴史展示室・民族展示室・市民の活動展示などのギャラリーがあり、2階には映像展示室が設けられている。

 別館には伝統的な民家の暮らしを再現したスタジオも併設され、暮らしを体験できる。


「ここが東瀬市郷土博物館ですか。自然との調和をイメージした雰囲気の良い建物ですね。」


 木々や野草に囲まれた建物にフィエールさんは好印象を持ったようだ。


「中に入る前に敷地内を一周しない?結構広いから魔物がいるかも。」


「そうだな、建物内の様子を見るついでに見回っておくか。」


 彩奈の意見に賛成した俺達は敷地内に入り建物の周りを一周することにした。

 後方を警戒しながら敷地内の様子を見て回るが割れている窓ガラスや建物のヒビもないようだ。


 非常口にも手を掛けるが鍵がかかっていて開かない。

 窓ガラスから見える建物内は言い表すなら『日常』。


 魔物に襲われた形跡も逃げ出した形跡もない俺達が忘れていた日常の後がそこにあった。


「特に異常がなさそうだし。入ってみるか。」


「でも、どうやって入るの?」


 敷地内を1周して入り口の前にやってくるとドアの前に『休館日』書かれた立札が立っていた。


「やっぱり入り口のドアを割るしかないんじゃないかな?」


「それしかないかもな。他に入れそうな所がなかった以上実力行使するしかないだろうな。」


「継さん!待ってください!」


 その辺にあった手頃な石を持って入り口に近づくと耳をピクピクと動かしたフィエールさんが急に声を張り上げた。

 すると2階の窓と1階の奥から走って来る2体の虎に似た紅い魔物が見えた。


 魔物は入り口と2階の窓ガラスを破って俺に襲い掛かる。


「いつの間に!?」


 即座に<急加速>を発動させて後方へと距離を取りながら剣を抜く。


「様子を窺っていたのはどうやら魔物の方だったみたいですね。」


 弓を放ち魔物を牽制するフィエールさんの表情は気づけなかった自分に恥じているような表情をしていた。


「継、あの魔物ってもしかしてクリムゾンタイガーなんじゃない?」


「あれが?」


「えぇ、そうです。冬也さんはよくご存知でしたね?」


「ルーザァさんが以前話していたのを思い出したんです。確か正面からしか襲ってこないとか。」


 加えて狩るのが簡単で冒険者に人気、油が旨くステーキや串焼きすると良いという割とどうでも良い情報も言っていた気がする。


 正面からしか襲ってこないか・・・。


「2体とも俺がやる。冬也達はうち漏らした時のフォローを頼む。」


「わかった。」


 さっきは突然の事で驚いたが今度はさっさと終わらせる。

 俺がゆっくりと歩きながら剣を構えて近づくと2体のクリムゾンタイガーは師匠が話していた通り正面から飛び掛かってきた。


「グアァオォォォン!」


 <戦闘気装>を発動し身体を包む微かな蒼いオーラを素早く剣に集中させる。


「はっ!たぁっ!」


 正面から飛び掛かる2体のクリムゾンタイガーの攻撃を避けながらそれぞれに一閃を放つと両断された魔物の体がドサッと地面に落ちた。


「私達の出番は無かったね。」


「継さんも随分と腕を上げました。」


 助けてもらっているフィエールさんに少し認められたのは嬉しいけど俺自身が納得できていない部分が2つあった。


 1つ目はスキルに頼りがちになってしまっている事。

 クリムゾンタイガーを一閃で両断出来たのは<戦闘気装>の恩恵による所が大きく、発動させていなければこんなにも易々とはいかなかった筈である。


 師匠の言う所の『スキルを持つ奴に陥りやすい事』に陥っているという事実。


 2つ目は<戦闘気装>の出力が上がらないという事。

 天狗との戦闘時に発現した蒼炎のように揺らぐオーラが出せず僅かなオーラを纏うのが精一杯。身体能力と剣の切り味は上がったが本来の力の50%も出せていない状態なのだ。


 この2つをどうするか今後の課題だが今は情報を集めよう。


「まだ中に潜んでいるかもしれないから固まって進もう。」


 俺達はクリムゾンタイガーが割った入り口から館内へと入ることにした。


「ここも図書館と一緒で静だね。」


 冬也が周りに目を配りながら素直な感想を漏らす。

 さっきのクリムゾンタイガーが荒らした場所以外は館内に変化が無い様子だったので一つ一つ調べることにした。


 歴史展示室には2万年前の東瀬市初の人類から江戸までの歴史を展示している。

 展示されている写真には東瀬市域の遺跡で出土した陶磁器や古文書などを取り出す当時の様子が写っている。


 民族展示室では江戸から現代にいたるまでの歴史や暮らしを紹介していた。


「これが古文書だね。」


 冬也は歴史展示室に置いてある古文書を興味深そうに見ている。


「どんな内容なんだ?」


「検地帳みたいだね。」


「それって検地の結果を村単位で集計して纏めたやつだよな?」


「そうだよ。見て今の東瀬市じゃ聞かない地名も書いてあるよ。」


 解説文には合併されたのか変更になったのか今となっては分からないが見たこともない地名が並んでいた。

 古文書を眺めていると誰かに呼ばれた気がしたので振り返り反対側で別の古文書を眺めている彩奈に訊ねてみる。


「彩奈、俺を呼んだか?」


「ううん、呼んでないけど?」


 首を振る彩奈。


「おかしいな・・・。」


「フィエールさんは?」


「私も呼んでいませんけど・・・。」


 室内を見渡すが俺達しかいない。

 気のせいだったのだろうか。


(こっちにきて・・・。)


 今度ははっきりと聞こえた。

 声が聞こえた方向に目を向けるとさっきまで誰も居なかった歴史展示室の出入口に古い布を繋ぎ合わせて出来た服を着た小さな男の子が立っている。


「俺を呼んだのは君か?」


 俺の言葉に子供は頷く。


「継くん、誰と話しているの?」


「誰ってそこの出入口にいる子供だけど?」


「私お化けとか苦手なんだからそういう冗談やめてよ、継くん!」


 冗談?彩奈は何を言っているんだ?


「いや、そこに居るじゃないか。」


 俺以外の3人が出入口へと目を向ける。


「出入口には誰も居ないよ。継は一体何と話しているの?」


 冬也は俺に不審な目を向け、彩奈はフィエールさんに抱き着き少し青い顔をしている。

 俺にしか見えていない?


(お願いついて来て!)


 子供は俺から視線を逸らさず縋る様な眼差しで必死に訴えかけて来る。

 何を見せたいのか分からないがとても大事な事を伝えようとしている事だけは分かった。


 それはきっと俺達が探している情報だと俺にはなぜか確信が持つことが出来た。


「わかった、案内してくれ。」


「ちょっと継くん!どこいくの!?」


「皆も付いてきてくれ!」


 子供の後を着いて行くと資料保管室にたどり着いた。


「ここの中にあるのか?」


 子供は頷き扉をすり抜ける。

 本来は関係者以外立ち入り禁止の場所なので入ることすら許されないが今は緊急時という事で中に入る。


 室内には白い保存箱が何列も並ぶ棚の中に一つ一つ収められ壁際の棚には本が並んでいた。

 おそらくここにある保存箱の1つ1つに古文書や陶磁器が入っているのだろう。


「ここの何処にあるんだ?」


(こっち。)


 関係の無いモノには手を触れないようにするため子供に案内させることにした。

 10個ほど棚を通り過ぎたところで子供が立ち止まる。


(ここ。)


 11列目の3段目にある一番手前の箱を指をした。

 箱には『東瀬の伝承と妖について』と書かれたタイトルが付けられている。


「これだ!」


 箱を取り出して近くにあるテーブルの上で中身を確かめると1冊の古文書が入っていた。

 古文書に触れようと手を伸ばすと冬也に手を掴まれる。


「はいこれ。壁にかけてあったよ。」


 手渡されたのは手袋。


「歴史的に価値がある物だからね。素手で触らない方が良いよ。」


「助かった、危うく古文書を汚すところだった。」


 手袋を装着して50ページほどの古文書を1ページずつ捲っていく。


「なるほどな。」


 全てのページに目を通し終わり古文書と閉じて子供に話しかける。


「これ何て書いてあるんだ?」


「もう~、ふざけている場合じゃないんだからね?」


「継さん、真面目にやってください!」


 なぜか女性陣から非難を浴び、冬也は苦笑いをしている。

 現代の文字と違ってくずれていたりして読めないんだから仕方ないだろ?


 俺が読めなかったことが予想外だったのか子供は慌てた顔をして資料保管室を漁り代わりになる資料を探す。

 しばらくすると子供は若干疲れたような表情を見せながら指を指した。


「東瀬市と妖の歴史」


「とりあえず、読んでみましょう。」


 この本は昭和に書かれており著者は先祖代々この東瀬の地に住んでいる人々を対象に聞き込みをして完成させたようだ。

 著者が調べたところによると東瀬には古くから妖との記録が残っている事がわかった。


 東瀬という地域名は元々『東にある妖と出会う場所(瀬)』という意味でつけられたのだが時代が進むにつれて印象が良くないという理由で『東にある流れが速く浅い場所』という意味に変更されたと書かれている。


 東瀬という名前を残したのは他の県にある〇瀬市という行政的な混同を避けるために敢えて東瀬という名前を残すことにしたそうだ。


「『東にある妖と出会う場所(瀬)』と書いてあるという事はこの東瀬の地は古くから妖怪が多い地域だったという事なのかな?」


「かもしれないな。正確には東瀬から西部の山の辺りまでかもな。」


 さらに読み進めると東瀬に建てられた5カ所の神社や寺の事が書かれている。

 東瀬川神社、日奉神社、穏奉寺、心富寺、東瀬神社。


「東瀬川神社、日奉神社、穏奉寺は最近壊された所だね。」


「やはり何らかの目的があって壊しているようですね。」


 と、冬也とフィエールさんの声が後ろから聞こえて来る。

 5カ所の神社や寺は平安時代から順番に建てられたものだがご利益に違和感を感じた。


 それは健康、地域安全、身体安全、子宝、除災招福と5カ所とも全て同じ内容のご利益でそれ以外がないのだ。


「なぁ冬也、一つの地域にここまで地域の安全と人々の健康のご利益が集中することがあると思うか?」


「そうだね・・・。全くないとは言い切れないけど差別化するために交通安全や家内安全ぐらいはあっても良いと思うかな。」


「そもそもその5カ所は元々何とゆかりがあった場所なのかしら?」


「それはきっとこれでしょう。」


 フィエールさんが指した本の写真には猿の石像が写っていた。


「お猿さん?」


(猿神だよ。)


「猿神・・・。彩奈、図書館から妖怪の本を持ってきていたよな?見せてくれ。」

「う、うん。ちょっと待って。」


 彩奈から本を受け取り猿神について調べる。


「猿神、猿神、あったこれだ。」


 猿神。

 猿は太陽神の使いとしての側面があり、山の神としても尊ばれ外からの侵入を排除して村内を守る村落の神仏と結びついている。


 猿には日の出と共に騒ぎ出す性質があるため太陽と関連付けられたとする説もあるらしい。


 妖怪の猿神。

 岡山県や徳島県のある地方では猿神は憑き物されておいて、憑かれた人間は暴れ出すと言われている。

 と書かれていた。


 初めの本に戻り読み進めると東瀬と猿神について簡単にまとめてあった。

 山から下りてきた猿神は近くの村々を襲った。


 猿神はやがて東瀬の地にたどり着くがそこで待ち構えていた力を持つ術者達により東瀬の地に封印される。

 その封印に利用したのが5カ所の祠。


 5カ所の神社や寺はその祠を管理するために建てられたそうだ。

 本来の名前も元をたどると日奉神社は日奉神社→猿奉神社→猿封神社という太陽神の使いの側面から採られた猿を封じる神社名だったことが分かった。


 ・穏奉寺→猿奉寺→猿封寺

 ・心富寺→申富寺→申封寺


 子供が俺に何を伝えたかったのかを理解し本を閉じる。

 今までの内容をまとめると次の通りだ。


 ・現代で呼ばれている名前は時代の流れによって変更され後世には正しく伝えられなかった。

 ・東瀬市は元々妖と縁がある地であり、最近壊れた東瀬川神社、日奉神社、穏奉寺の祠は猿神を封印している要。

 ・猿神は憑き物とされ憑かれた人は暴れ出すという事。ここ最近の避難所での揉め事は封印が壊れた影響による可能性が高いという事。


「これではっきりしました。私達の里を襲った者は猿神を復活させようとしています。封印が解かれれば人々にどのような影響が出るかわかりません。ここで止めるべきです。」


 フィエールさんの言葉に俺達は頷き、そして子供に訊ねた。


「君は俺にどうして欲しいんだ?」


(止めて欲しい。猿神様は自我を失っているけど外に出ることを望んでいない。もしも封印が解けたその時は止めて欲しい。)


「わかった。約束する。」


 子供は(お願い。)と言い残して姿が見えなくなった。


「俺達も行こう。」

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