第06話 修行の成果

「山に旨そうなのがいる気がする。」


 その言葉が出たのは3人で朝食を取っていた時だった。

 この師匠は何を言い出しているんだか・・・。


「一応聞きますけど、山に何がいるんですか?」


「一応ってなんだよ。可愛くないな。そうだなぁ、魔獣でもいるんじゃないか?」


 変な沈黙が流れた。


「魔獣って食べられるんですか?」


「あぁ、食べられるぞ。お前たちも食べたことがあるだろ。」


「「え?」」


 俺と冬也は顔を見合わせる。

 初耳なんだけど?俺達はすでに食べている?いつ?


「気づいてなかったのか。ほら、前にカレーの中に肉が入っていただろう?あれだ。」


 カレー。

 そういえば少し前に配給のおじさんが言っていたな。


『今日は、お肉入りのカレーだよ。』


 配給のおじさんの言葉が蘇る。


 美味しかったけど結局何の肉か分からなかったんだよな。

 って、あの肉が魔獣の肉!?


「あれか!」


「魔獣の肉だったんですか!?」


「おそらくクリムゾンタイガーの肉だろうな。油が上手いんだよな。ステーキや串焼きにするといいぞ。」


 暢気にクリムゾンタイガーの感想なんて言っているがこの町の近くにはそんな物騒な魔獣が居るのか。


「クリムゾンタイガーは狩るのが簡単だから冒険者に人気だ。正面からしか襲い掛かって来ないからな。」


「クリムゾンタイガーの話は分かりましたけど、魔獣なんて食べても大丈夫なんですか?体に影響とか・・・。感情が消失したり・・・。」


 食べ過ぎると性格が変化したりとかさ、あと手が触手とかになったりとか。

 得体の知らないものを口に入れるって普通に怖い。


「だっはははは、無い無い!カレー以外の料理にも入っていたじゃねぇか。影響があるならとっくに出ている。」


 なぜか爆笑されてしまった。

 まぁ、何も影響ないのなら良いけどさ。


 公に料理の中に入れると俺みたいに抵抗ある人が出て来るから、こっそり入れているのだろう。

 そう自分に言い聞かせ魔物の肉ついて目をつむることにした。


 師匠の思い付きにより剣術修行を中止して西部の山で狩りをすることになった。

 山へ行くためには結界の外へ出なくてはいけない。


 そのため、俺と冬也も竹刀ではなく師匠からもらった真剣に持ち替える。

 鞘をつけたまま剣を軽く振るい感覚を試してみる。


 当たり前の事だが竹刀と比べて真剣は重いな。だけど、やれる。


 今までの修行のおかげで基礎能力も向上し戦えると自分の中で確信を得た。

 それは俺だけではなく、冬也もまた同じ気持ちなのか何かを実感しているように見えた。


 水分補給や食料などは師匠が用意すると言っていたので山への準備を手早く済ませ避難所を後に結界外へ向かう。


 途中一人の女の人に声をかけられた。

 フィエールさんだ。


「こんにちわ、継さん。今日は修行じゃないんですね。」


 隠している訳じゃないけど、やっぱり修行している事を知っているのか。

 俺の天幕の入り口には師匠が持ってきた看板がぶら下がっている。


 どこにあったのか天幕とは雰囲気が合わないファンシーな看板に達筆な字で『修行中』と書かれ、傍から見ると天幕とのギャップが凄いことになっている。

 完全な悪目立ちである。


 師匠っていい加減だから見た目とかあまり気にしないんだよな。

 食べられればいい、使えればいいみたいなところがある。


「こんにちは、フィエールさん。西部の山へ狩りに行くんですよ。」


 継とフィエールの会話の様子を見ながらルーザァは冬也に質問する。


「あのエルフの女は知り合いなのか?」


「フィエールさんと言って異界変災の時に継の命を救ってくれた恩人です。」


「ふ~ん。命の恩人ねぇ~。」


 ルーザァは冬也の返答に対し、興味がなさそうに相づちを打っていたが決して二人から目を離すことはなかった。


「『山で』ということは結界の外へ出かけるのですか?」


「えぇ、結界の外に出ないと山へ行けませんから。」


「そうですか・・・。」


 フィエールさんは「どうしよう。」と思案しているようだ。


「何か問題があるのですか?」


「問題があるというよりも問題が起こるかもしれません。」


「どういうことですか?」


 俺達が山へ入ると何か不都合なことが起こるのだろうか?

 西部の森にはフィエールさんの故郷があるとか言っていたからその関係なのかもしれない。


「実は西部の山は私の故郷の者が見回りをしているのです。もしかしたら見回りの者が山を荒らしに来た者と勘違いをして揉め事になるのではないかと・・・。」


 フィエールさんが少し不安そうに師匠に目を向けた。


 予想通りフィエールさんの故郷が関係していたか。

 エルフって本当に森や山を荒らす者には厳しいんだな。


 イメージ通りで少し嬉しい。

 でもフィエールさんが不安に思うのも分かる。


 師匠の顔なら山賊とかに間違われても仕方ないかもしれない。


「おい、継。今失礼な事を考えただろ!」


「気のせいです。」


「ははは・・・。で、ですね!」


 パン!とフィエールさんが自分の掌を合わせる。


「私も継さん達について行こうと思うのですがどうでしょうか?私が居れば故郷の者に出会っても揉め事を避けられますよ。それに万が一何かあっても私の故郷に避難できますから。」


 フィエールさんの提案は正直ありがたい。


 今の山は気軽にハイキングできる状況ではないだろう。

 師匠は『魔獣がいるんじゃないか。』と適当に言っているが間違いなくいるだろう。


 この世界がどうなっているのか分からない以上常に避難ができる場所は確保しておきたい。

 それに師匠がフィエールさんの故郷の人と揉め事になるのは正直申し訳ない。


 師匠の事だから下手したら揉め事以上のことが起こる危険性があるし・・・。

 いやでも師匠でもさすがにそこまでは・・・。


 大丈夫だよ・・・な?


 確認の為に師匠に顔を向けると師匠は黙って頷いた。


 OKってことか。


「それじゃあ、よろしくお願いします!」


「任せてください!」


 結界と結界外の境界線。

 変わり果てた結界の外の街を見て思う。


 ここから一歩出れば魔獣などが闊歩する世界のなんだなと。

 異界変災以降、人の手が入っていない街は例えるなら『死んだ街』。


 街は静まり返り、家のガラスは割れ壁や塀に植物が巻き付き、道路には急いで逃げようとした車同士が正面衝突したまま放置されている。


 結界から離れるにつれて結界内の声や音は聞こえなくなった。

 そして、俺達の足音と何かの鳴き声だけが聞こえた。


 移動中、西部に向かう冒険者の馬車と出会い相席させてもらうことにした。

 冒険者の人達は車に興味が惹かれたのか。


「車輪が付いているという事は乗り物なのか?」


「鉄をあんなに使うなんて貴族の乗り物なのかもしれない。」


「君たちこの世界の人だよね。あの鉄の塊は馬も無しにどうやって動かすんだ?」


「継さん、私も気になります!」


 と、フィエールさんも交じり説明に苦労した。

 避難所を出て数時間、目的の西部の山の麓に到着する。


「ここも結構変化しているな。」


「そうですね。この一帯に住んでいた方に以前の姿を写した写真?というもの見せてもらったのですが、私達の世界の土地や植物が同化したことで生態系が一変してしまったみたいですね。」


 師匠とフィエールさんが話すように一見普通の山に見えるがよく見ると見たことのない木々が生えている。


「山の中に入っても大丈夫なのでしょうか?」


「えぇ、山の中に危険な植物が生息していないことはすでに確認済みなので大丈夫ですよ。」


 フィエールさんの話を聞き内心ホッとする。


 食虫植物みたいなのは正直勘弁してほしい。

 ウネウネとした触手をごまんと付けたハエトリソウを想像してみるが勝てる気がしない。


 いないとは思うけど出会ったら即撤退しよう。


 山道を進んでいると師匠が手で制止する。


「二人とも止まれ。」


 すると師匠の足元に一本の矢が刺さった。

 どうやらフィエールさんの予想が的中したようだ。


 飛んできた方向の木の陰から3人のエルフが現れる。


「そこの者止まれ!見たところこの地域に住む者ではないな!この山に何の用だ!」


「待ってください。彼らは怪しい者ではありません。」


 後ろからついて来たフィエールさんが彼らに近づき説明をしてくれている。

 時々こちらを見て何か言っている。


 何を話しているのだろう。


「こっちを見て何か話しているな。」


「そうだね。何を話しているんだろう。」


 しばらくするとフィエールさんが戻ってきた。

 どうやら話がついたらしい。


「お待たせしました。山に入ることは許可を貰ったのですが1つ気がかりがあります。」


「気がかりですか?」


「えぇ、どうやら私達エルフでも見たことのない魔物が目撃されたそうなのです。今の所被害はないのですが、実践経験が少ない継さん達は山を下りるように忠告を受けました。」


 なるほど、さっきこっちを見ていたのは忠告されていたのか。

 エルフでも見たことのない魔物ということは異世界の魔物ではないということなのか?


 それとも異世界と交わったことによる突然変異なのだろうか?


「なら問題ない。山奥まで入る気はない。もう少し進めば獲物がいるだろうしな。」


 師匠はエルフの忠告をバッサリと切り捨て進むことを選択した。


「今更ですが継さん達はどうして西部の山で狩りをしようと思ったのですか?魔獣を狩るだけなら結界外の街中で良いと思うのですけど・・・。」


 フィエールさんは不可解な行動に首をかしげる。

 当然の反応だと思う。


 なので、どうして狩りをすることになったのか説明する事にした。


「え?そんな理由でここまで来たのですか?」


「「はい。」」


「なんて言いますか。ルーザァさんは自由な方なのですね。」


 フィエールさんは俺と冬也を見ながら困惑する。


 故郷の方に説明までして頂いたのにうちの師匠がすみません。


「師匠もなんであんなことを言い出したんですか?」


「あんなことってなんだ。」


「旨そうなのがどうとかですよ。」


「あぁ、それか。そんな気がしたからというのもあるが、お前たちも一応戦えるレベルになってきたから実践を積ませようと思ってな。」


 要するに旨そうな獲物がいると勘が働いたから俺達を実践投入するのに丁度良いと思ったわけか。


「それなら普通に『狩りにいくぞ!』で良い気がするんですけど。」


「良いんだよ、実際旨い獲物がいたしな。」


 と、師匠は指を指す。

 そこには大きな姿が見えた。


「熊かな?2m以上はありそうですね。」


 冬也は目を凝らしながら観察している。


「冬也さん、ただの熊ではありません。あれはクラッシュベアです。今は爪を隠していますが直径15㎝程度の幹なら真っ二つにできます。」


 まともに受けたら人間の腕なんて簡単に吹き飛ぶということか。

 只々恐ろしい生き物だな魔獣ってやつは。


「継、冬也。お前たちのスキル禁止を解く。」


「それは俺と冬也でクラッシュベアを狩れってことですか?」


「そうだ、俺とそこのエルフは手を出さない。二人だけで狩れ。」


「え?」


 手助けをしてくれるつもりだったのかフィエールさんは少し驚いた顔をして師匠を見ている。


「今日の晩飯も兼ねているから狩れなければ飯を抜きだ。死ぬ気でやるんだな。フィエールとか言ったか。失礼するぞ。」


「え?きゃああああ!」


 師匠はフィエールさんを抱えたまま少し離れた木の枝に飛び乗った。


 人を抱えて飛び乗るなんて人間業じゃないな。

 スキルか魔法で身体強化でもしているのか?

 剣術といい、今の身体能力といい何者なのだろうか。


「継、今のフィエールさんの声でクラッシュベアが僕達に気づいたみたいだよ。」


 俺と冬也は静かに剣を抜き構える。

 クラッシュベアは警戒をしているのかゆっくりとこっちに近づいてくる。


 口の中の水分をのどに流し、少しずつ心拍数が速くなるのを感じる。


 落ち着け、目の前のクラッシュベアに集中しろ。

 神経を研ぎ澄ませ。


 大丈夫だ。師匠との修行を思い出せ。


 荒々しい敵意を放っているが師匠の威圧感に比べればどうということはない。


 クラッシュベアと目が合った。

 クラッシュベアの瞳の奥に敵意だけではなく殺意が読み取れた。


「つっ!」


 勝手に足が後ずさり剣を握る右手がカタカタと震えだす。


「継?」


 あの時と一緒だ。

 リザードマンと対峙したときと同様にさらに鼓動が速くなる。


 それに冬也が心配そうに視線を向けているのも感じる。

 情けない話だ・・・。


 何が師匠の威圧感に比べればだ。

 これから倒す相手に殺意を向けられて手が震えだしたあげく、心配されている。


 いくら修行してもあの時と何も変わっていない。

 弱い自分のままじゃないか。


「大丈夫だよ。」


 不意に冬也の声が聞こえた。


「大丈夫、僕たちは強くなった。」


 冬也に顔を向けると冬也はそれ以上何も言わず頷いた。


 俺は大きく深呼吸をし、恐怖で震える右手をグッと力を込めた左手で無理やり抑え込み剣を構えなおす。


「そうだな。もう大丈夫だ!来るぞ!」


「ウボオオオオオオオオ!」


 間合いに入ったのか吠えながら走って来るクラッシュベアの勢いは弱まるどころかさらに強くなった。


「このまま突進する気か!?」


 まだ、まだ、今だ!

 ギリギリまで引き付けて<急加速>で躱す。


 勢い余ったクラッシュベアはそのまま木と激突し、へし折ってしまった。


「爪じゃなくても即死の威力か!」


 戦闘の様子を見ていたフィエールは抗議の声をあげる。


「継さん達にクラッシュベアを相手にさせるのは無茶です!怪我だけではすみませんよ!」


「黙って見ていろ。」


 ルーザァはフィエールを睨みつけた。

 クラッシュベアは木と激突したことを物ともせずに再び突進を仕掛けようと向き直る。


「たああああ!」


 俺は距離を詰めクラッシュベアに切りかかるがクラッシュベアは立ち上がり黒く鋭い爪で剣を受け止める。


 一撃でも貰えば致命傷だ。


「たっ!はっ!てぁ!」


 剣を振るいクラッシュベアと数度打ち合う。


「グォォオオ!!」


 痺れを切らしたのかクラッシュベアは強靭の顎で俺の腕に噛み付こうと大きく口を開けて顔を突き出してきた。

 瞬時に後ろに飛びクラッシュベアの牙を躱す。


 これが魔獣なのか、普通の熊とは違う気がする。

 まるで人間相手に戦っているような知性を感じる。


 一旦距離を取り冬也に意見を求めることにした。


「冬也の目にはアイツがどう見えた?」


「体格のわりに素早い動きだけど攻撃方法は前足と体全体を使った力任せの単調な攻撃が主。でも、フィエールさんがいっていたように木の幹を真っ二つに出来る力があるから正面で長時間打ち合うのは避けた方が良いかも。それと打ち合いが無駄と判断したのか分からないけど、攻撃手段を変える賢さがあるから油断できない感じかな。」


 正面から受けるにせよ、避けるにせよ。

 短時間で倒した方が良いという事か。


「冬也、こっちから仕掛ける。」


「わかった、合わせる!」


 クラッシュベアに向かって前へ出る俺の動きに合わせて冬也もその後に続く。

 向かってくる俺達を迎え撃とうとクラッシュベアは折れた木を掴み投げつけた。


 <急加速>発動!

 <加速>発動!


 飛んでくる木を躱し、大きく腕を振り上げ待ち構えるクラッシュベアの元へ向かう。


「はっ!」


 振り上げている腕に止められる覚悟でクラッシュベアの上段へと剣を振るった。

 予想通りクラッシュベアの鋭い爪に剣が止められ、金属同士がぶつかり合ったような音が響く。


「ボオオオオオオ!」


「くっ!」


 体格に似合わない機敏な動きでクラッシュベアは爪を剥き出し激しく反撃をする。

 俺は剣が飛ばされないようにグリップを握る両手に力を込め、クラッシュベアの反撃に耐えながらチャンスを窺う。


 一撃一撃が重い上にさっきよりも興奮しているからか一つ一つの攻撃が想像していたよりも鋭いな。

 だけど!


 クラッシュベアの攻撃が大振りになり一瞬の隙ができた。


「ここだあぁぁ!」


 タイミングを見計らい鋭い爪に力の限り剣をぶつけてクラッシュベアの動きを止める。


「冬也!」


「はあああ!」


 掛け声とともに俺の後ろから矢の如く飛び出した。


 <加速>発動!


「てえぇぇぇぇぇぇぇい!」


 冬也の両手で握られた剣はクラッシュベアの脇腹と背中を斬りつける。


「グオオオオオオオオオオ!」


 冬也に反撃しようするクラッシュベアの悲鳴にも似た声が山に響き渡る。

 振り返りながら襲い掛かる左手の爪を冬也は、<加速>で回避しながら剣ではじいた結果クラッシュベアは隙だらけの姿を挟み撃ちの状態で俺に晒す形になった。


「今だ!」


 俺は隙だらけのクラッシュベアの身体を連続で斬りつけるたびに食材を切る感覚とはまるで違う、命を奪うという自分の殺意が剣を通して伝わってくることに動揺していた。


 自分の中にこんな狂気が潜んでいたのか・・・。

 心を強く持て、自分の狂気に振り回されるな。


 俺は強くなるんだ!自分の眼で世界を見るために、そして、もう二度と大切なモノを失わないために!

 だから今は目の前の魔獣を殺す!


「グガォオオオオオオオ」


 クラッシュベアも死に物狂いで反撃をしてくるが<急加速>を発動させ最小限の動きで受け流し注意を引き付ける。

 その隙に冬也がクラッシュベアの足に剣を突き立て体勢を崩し、冬也の後に続くように剣先から体全体を殺意で纏わせクラッシュベアの体に目掛けて俺も剣を突き刺す。


 体から血を流し徐々に動きが鈍くなっていくクラッシュベアの姿を見た俺と冬也は一気に畳みかける。


「継!」


「あぁ!」


 スキルを発動させた俺と冬也は互いがどこを攻撃するのか初めから分かっているかのように胸、背中、足、腕と入れ替わり立ち代わりスピード上げながら高速攻撃を繰り出していく。

 一振りごとに太陽の光に照らされた剣筋が悲鳴と共に走り、一匹の熊はまるでバラの花びらをまき散らしながら踊る様に鮮血を流しその身に剣を受け続ける。


「これで!」


「とどめだ!」


 手足に力を込め全力で剣を振るう。


「「はああああああああああああああああああああああ!」」


 二本の剣はクラッシュベアの胴体で交差する形で切り裂いた。


「グオオオオオオオオオオオオォォォォ・・ォォ・・・!」


 クラッシュベアの断末魔は段々小さくなり、ドシーン!と音を立てて倒れた。

 俺と冬也は立ち上がってこないクラッシュベアの姿を見て徐々に倒したことを実感し、初めて剣を下ろして警戒を解いた。


「はぁ・・・、はぁ・・・。やった・・・。」


「はぁ・・・、はぁ・・・。なんとか倒せたね。」


 戦えた、今までの修行は決して無駄じゃなかった。

 自分の掌を見て強く握る。


 その後、俺と冬也は無言でハイタッチをした。

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