ラーサの魔法と洞窟での指輪
「やばいっ」
急上昇して炎の壁を避けたラーサの羽が一部焼けきれた。
「このままじゃまずいな」
ラーサに目を奪われているデーモンの数が減っていかない。倒した後から湧き出てきていた。
「……かの者に癒しを」
回転しながら飛び続けるラーサに白魔導士が回復魔法を飛ばしてくれた。一瞬空中でラーサが止まる。炎が眼前を通り過ぎるのと同時にラーサの羽が再生していた。
「ありがとう」
お礼を言うラーサの声は炎の音にかき消されていた。
リーン視点。
一本道を行く。洞窟の中はしーんとしていた。ランタンの光が先を照らす。もうすぐ地図に書かれた次の印の場所だった。
「行き止まり!」
壁に手を当てる。ランタンを向けて壁を調べまわした。ふと違和感がして一歩下がる。
壁全体が見える様に光をあてた。
「あった」
壁の凹凸が文字を描いていた。かろうじて読めるくらいの凹凸だった。
〈指輪を〉
「指輪」
リーンが迷う。壁を再び調べ始める。一か所くぼみがあるのみで何もありそうにない。くぼみをリーンは暫く眺めて、ランタンを地面に置き、変化を解いた。足にはめていた指輪を外し、くぼみに入れる。
壁が光り輝き、次の瞬間消えていた。床に指輪が落ちる。それを再び足にはめ変化してランタンを拾う。
「次にいかないと」
休んでいる間は無かった。
ラーサ視点。
ラーサが空高く舞い上がる。そして、風に言葉を乗せて人間の指揮官、将軍に質問を投げかけた。
「なあ、竜巻を起こしてもいいか?」
将軍が少し考え込む。このままではらちが明かない。
「やってくれ」
そう言って魔導士達に魔法の壁を兵士達の前へ作らせた。
「よっし! 大いなる風、我が敵を屠るべく双竜を起こせ。汝がジンの名の下に――」
微かな風が声と共に強風に変わる。そして二つの竜巻が起こった。
「オオオオオッ」
周囲にいた数十体のレッサーデーモンが風に飲まれる。
二対の竜巻は絡み合い、巻き込んだレッサーデーモンを引き裂いた。町の家々も粉々になって舞い上がった。範囲一帯が風に飲まれ上空に消えていく。
人間達の歓声が巻き起こる。
生き残ったデーモンは数体。今また一体が魔導士の魔法で崩れ去る。討伐はもう時間の問題だった。
その後、数刻もしない内にレッサーデーモンの鎮圧は終わる。
「じゃあな」
ラーサの言葉に将軍が手を振って応えた。兵士、魔導士もそれに続く。
手を振る人間達に手を振り返して、ラーサは姫の処へと戻っていった。
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