戦いと探査


 城の更に奥、崖の中腹までの道を飛び超えた。


 洞窟の入り口で変化する。人間の大きさになり入口に常備されていたランタンをつけて奥へ。


 ねっとりとした空気が洞窟に満ちる。暗闇がランタンの光を包んでいる。三人が横に並んで歩めるだけの広さがあった。天井も高く、進めないと言うことにはなりそうにない。


 地図を思い出す。この先の分かれ道に印がされていた。


〈勇気を示せ〉


 右と左に分かれた道の真ん中に文字が書かれた石碑があった。


「勇気……」


 目の前の床にはひび割れた石がひかれている。地下があるとすればそこから落ちるかもしれない。たとえ変化したリーンの重さでも床が割れそうだった。右や左への道には石を避けて行けるようになっている。


 足を道なき床へ踏み出す。


 一歩。カランと床の一部が下へ落ちて行った。


 二歩。床が沈む。足が落ちる前に床の下降は収まった。


 三歩と進む。ぐらっと視界が揺れた。すると左右に分かれた道が光り一本の道へと変化した。


「合ってた」


 ほっとしながらリーンが進む。あのまま右か左の道を選んでいたら、永遠にたどり着くことは出来なかっただろう。進む足に力がこもる。




 


 ラーサ視点。


 悪魔と人が放った魔法の炎の中で一人ラーサが飛び回っていた。


 風で人に届く火を逸らし、人間の放った魔法の軌道修正をしていた。


「あのピクシーを落とされるな!」


『はっ!』


 兵士達に勢いが乗る。将軍の一人が戦況を見て取って、ラーサが味方であることを知ったようだった。レッサーデーモンの数は意外と多く。帝国の北東地区の人間が悪魔と入れ替わっていたかのように 次々と湧いて出てきていた。


「くっ、多いな。竜巻で一掃出来ればいいのに。……そう言う訳にもいかないか」


 人間の炎の魔法に合わせてラーサが風で持ち上げた石礫を混ぜる。風で強化された魔法はレーサーデーモンの一体の頭を吹き飛ばした。


 大規模な魔法を使えないのは帝国の中に居るから。人間達も同じように歯がゆい思いをしているだろう。


 アークデーモン達が一点を見た。炎のブレスが集中したその一点にはラーサがいた。


「甘い」


 ラーサが風の中で炎をやり過ごす。人間の支援魔法がラーサにかかる。火が脇を通り過ぎた。汗が湧き出る。


「熱い、な」


 額の汗をぬぐいラーサは人間達の側に近づかないように離れた。自分に敵の攻撃が集中している。今は囮となって飛び回るのが有効だと感じた。


 きりもみ状に旋回する。自身の前に風の壁を作って空気抵抗を殺した。壁は炎からも身を守り、人間の唱えた魔法で火炎にしばらく耐えられる膜が体についた。それでも、飛んでくる炎はちりちりと肌を熱する。


 目の前のデーモンの一体が魔法を食らって倒れ伏し、もう一体がラーサに目を向ける。


 数十体が町を焼きながらラーサの前に立ちふさがった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る