契約解除
リーン視点。
意識が戻ってくる。瞼を開く。リーンは人間が自分を見下ろして魔法を唱えているのを聞いた。ずっとあった痛みが引いていく。
「私」
「リーン」
マールが心配そうにベッドに居るリーンを見ていた。ピクシーの姿だったのを知って、人間でないことが他の人にもばれてしまったことを悟った。
左へ体を向けるとラティナが荒い息をしながら意識を失っている。
「はあ、はあ……」
「ラティナ!」
「リーン、ラティナは契約を」
宰相を殺した。黒焦げになった人間だった物が宰相の部屋に残されていた。
契約を破った呪いがラティナの身に降りかかっている。即死しなかったのはラティナが直接手を下した訳ではなかったからだろう。
「ラティナ……」
「心配しないで今皇子がラティナの契約を解除する為に動いて下さっています」
「私も行ってくる」
落ち着かない様子でリーンが布団から抜け出した。
皇子の元へ。リーンが飛ぶ。マールに開けて貰ったドアから部屋を出て階下へ。右に曲がり、そこから外へ。門の詰所に保管された契約の羊皮紙の元へと一心不乱に飛んだ。
「皇子」
リーンの呼び掛けに詰所へ到達していた皇子が振り向いた。その手に赤く光る羊皮紙を握りしめている。
「リーン。少し待っていてくれ。今解除の準備をする」
皇子が兵からナイフを受け取る。親指を傷つけて、ラティナの契約の羊皮紙に一滴したたらせた。呪文の詠唱と共に赤く光っていた羊皮紙が青く輝く。
「後は」
「皇子。泉の雫が」
「無い、のか?」
兵の一人の言葉に皇子が驚く。
「どう言うことですか?」
たまらずリーンが皇子に詰め寄った。
「崖の中腹にある洞窟の奥にナナイの泉と言う処がある。王家を守護する泉の雫が契約の解除にどうしても必要だ。僕がいかないと」
皇子が行くとすると時間が多くかかるかもしれない、リーンにはそれまで待てなかった。
「それは私じゃ駄目なんですか?」
少し考える様子を見せた皇子が左手から指輪を抜いてリーンに渡す。
「君達のお陰で僕は僕のままでいられることが出来た。今度は僕の番だ。これを持って行ってくれ」
詰所に隠された地図と共にリーンが受け取る。
地図を見ると高い崖の一部が洞窟になっていた。ピクシーには大きすぎる地図を暗記して置いていく。
「気を付けて行ってきてくれ」
「皇子、寝室に注意してください。あそこには何かがあると思う」
「分かった」
指輪を足にはめ。リーンは飛んだ。町が燃えている。魔法の余波がリーンを揺さぶる。
ラーサがレッサーデーモンと戦っているのを横目にリーンは急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます