皇子と姫
ラーサ視点。
姫がドアを勢いよく開けて入って来た。頭を抱える皇子を見おろしていたラーサの前で姫が皇子へ駆け寄った。
「う、ううううう」
皇子を姫が揺さぶる。ラーサはただ皇子を見つめることしか出来なかった。
「ジェラルド様、ジェラルド様」
「無駄。そいつ、もう自我はないんじゃないか?」
ラーサが冷静に言う。そして姫の肩へと手を置いた。
姫が目を固く瞑る。そして皇子の額へとキスをしたのだった。背中を抱きしめ、優しく頭をなでる。皇子が顔を姫へと向けた。
「ひ、め」
「そうです。あなたのマーガレットです」
「あ、あああああああああぁ」
頭を抱えながらも目の焦点が合っていく。
「うそだろ」
呆然としながらもラーサは優しい風を起こした。皇子の汗が風に流れていく。
「あ、ああ、はあ、はあ」
叫び疲れた皇子が姫に体を預ける。荒い息をはいて呼吸を整えようとしていた。
赤く発光していた部屋が元に戻っていく。
複数の足音が聞こえる。
ラーサは変化を解除する。そしてもう一度人間大になるように変化した。マーガレットの姿から人間の姿へ。
城の中で爆発まで起こったのがようやく知れ渡ったのか、皇子の叫びに反応して衛兵達が寝室へとなだれ込んだ。
侍女だったラーサを押しのけて皇子へと殺到する。
『皇子!』
衛兵達の慌てた様子に幾分頭痛が収まったのか、皇子が片手を挙げて応える。
「もう大丈夫。あれは何だったんだろう?」
自身に起こったことを覚えていない様子で姫から少し離れたのだった。
「よかった」
姫の目に涙が浮かぶ。
「はあ、はあ。あ、ありがとう。君のお陰だ」
思い出したように姫が皇子の両腕の裾を握りしめる。
「白魔導士を、急いで白魔導士をお願いします。侍女が怪我をして」
すぐに反応したのはラーサだった。その場を抜け出し姫の部屋へと急ぐ。
外が騒がしい。町の一部が炎に包まれていた。城から町へ、将軍二人が出動している。ラーサが足を止めた。
「悪魔? レッサーデーモンって奴か」
いつ町へ入ったのか? 分からない。下位の悪魔達が町を攻撃している。口から炎を吐いて建物を焼いていた。兵士達や魔道大隊が悪魔達へ攻撃を開始する。
「ラティナ、何してんだ。こう言う時の為にお前がいるんじゃないか」
町での戦闘が始まる。ラーサは姫の部屋へ行くのを止め、変化を解いて町へと飛んだのだった。
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