結婚式と姫と妖精


 姫の部屋の窓にラティナ達が戻って行く。庭には葉を茂らせた大木が日光を遮っている。木漏れ日の中からラティナやリーン、ラーサが顔を出す。


「どうでした?」


「いい人そうだったわ。ただ」


 リーンが姫の不安を払う。


「ただ?」


「情緒が不安定みたいで、どこかおかしい感じが。あ、それと皇子が初夜に自分を注意してくれって言っていました。後で対策を練らないと」


「ありがとう」




  

 色々な準備であっと言う間に日にちが過ぎる。ドレスの最終的な仕立て。式の打ち合わせ。段取りなど。ドレスなどのことを考えると急ピッチと呼んでいいくらい式までの期間が短い。


 そんな中でもラティナ達は情報収集を怠らなかった。


 しかし、皇帝の居場所は分からないままだった。式の方も順調に用意が進んでいる。今は姫のことを最優先にして他のことには多少目を瞑った。





 三日後、侍女達が慌ただしく姫の身なりを整えていた。式用のドレスを着飾った姫は美しく、いつも後ろで束ねていた髪は下ろしていた。青い瞳が不安そうにリーンの方を伺っている。


「ラーサに任せるのはちょっと不安かも」


「他にいないだろ。ラティナは最大戦力で手加減出来そうにないし、リーンは魔法にたけているが身を守るとなると」


「そうよね。でも魔力探知に引っかからないかな?」


 誰が夜、姫の代役をするかでリーンとラーサがずっと話し合っていた。ラティナは姫の隣に立って姫と同じように二人の結論が出るのを待っていた。


 ……。


「じゃあ、そう言うことで」


「わかった」


 リーンの強制変化でラーサが姫に化ける。後は式のお色直しで入れ替わることになった。


 魔力を探査するのは恐らく外から来る者だけだろう。と二人が下した結論だった。





 昼を廻る頃に大広間に式場が出来上がる。ラティナがまずその場に着いた。姫の従者の位置へ行き人々が入ってくるのを待つ。大臣や兵士、爵位を持った人々が入ってきて所定の位置へとついていった。


 宰相は最後に現れ、皇子はその前に入場した。マーガレット姫は緊張していたのかあまり言葉が出てこない。ラティナがかたずを飲んで見守る。


「姫」


 皇子が姫を神父と宰相の前まで人々の間を通り連れて行く。会場の人々が厳粛に見守る中、宰相が二人を祝福して姫にティアラを授け、皇子が姫に指輪をはめさせる。神父の合図で皇子が姫のベールを上げた。


「永遠にあなた様だけを」


「永久に姫と共に」


 変わらぬ誓いを捧げる二人。宴に入るまでの間リーンが周囲に目を配る。沸き上がる拍手と喝采を受けてバルコニーへ。


 国の人々のパレードが始まる。手を振り続ける姫と皇子が見守る中、歓声に包まれた町は次第に更けていった。


 二人は広間の上段にある二人掛けの椅子の前へと行き腰を下ろす。

 ほっとラティナは胸を撫でおろした。




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