式に備えて(情報収集)
街路樹が立ち並び、水路に木の葉が堕ちる。町から城へ、木漏れ日を受けながらラティナが歩いていた。ラティナと共に町で情報収集していたラーサが路地から顔を出した。
「町民達は戦争をしたくないみたいだな」
「うん、みんな戦は嫌だって」
道行く中でラーサが呟く。それにラティナも聞いて来たことを話したのだった。
リーンが城の前で待っていた。
「どうだった?」
ラティナとラーサが聞いて来たことを告げる。
「そっちは?」
ラーサが城での情報をリーンに尋ねた。
「あの男はこの国の宰相だったわ。帝国の皇帝はいま姿がみえないみたい。皇子を皇帝にって言う声もあるらしい」
「トップが戦争の陣頭指揮なんてする訳ないし。どうなってる?」
ラーサの言葉にラティナとリーンが顔を見合わせる。
「四人の将軍は北と西の砦に常駐しているみたい。残った二人の将軍が城の警護にあたっているそう」
リーンが言い終えるとラーサは難しそうな顔をして押し黙った。
「思うんだけど、この戦争状態って帝国が原因なんだよね?」
部屋へと戻る道すがらラティナがリーンに顔を向けた。
「町では宰相が何か知っているみたいな話をラティナはしていたよね。宰相は何を考えているんだ? みたいな」
「うん。あの人がきっと何か知ってる、とは思う」
ラティナ達が部屋のドアをノックする。姫はすぐにドアから顔を出してくれた。三人をすぐに招き入れる。
部屋にあるお茶入れでリーンがお茶を注いでいく。
「マール。町で聞いたんだけど、結婚式が近いってほんとう?」
「ほんとうも何も私はもう婚姻をすませているから、いつ式があっても不思議ではないですよ」
観念したように姫が顔を曇らせた。見たこともない相手といずれ子供を作らなければならない。それが姫には不安だったのだろう。ティーカップを持つ手が震えている。
「私達がいる間は大丈夫。マールに指は触れさせないから」
リーンが凛とした声で励ました。
「ありがとう」
それだけ言うのが精一杯だったのか、姫は口を閉ざした。
一夜が明ける。
部屋がノックされた。いそいそと朝食の準備を済ませて侍女が帰っていく。入れ替わりに宰相が現れた。
「マーガレット姫。式の日取りが決まりました。三日後の一二時に。ドレスなどは用意していますので、ご安心を」
それだけ言って去って行く。
ラティナが姫の肩に手をやり、リーンが姫の手を握った。
「相手の人がどんな奴か見にいかないか?」
ラーサがピクシーの姿に戻ってラティナ達を誘った。姫の顔が少し明るくなる。
「どんな人なのか見てきてくださいます?」
「マールがそう言うなら」
リーンが頷く。ラティナも変化を解いて、窓枠に足をかけた。
外を通って城の上空を飛ぶ。皇子の居る場所はリーンが見当をつけていた。
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