城の中へ
ラティナ視点
ひときわ大きな建物が町の奥にそびえ立つ。人間の姿のまま三人は城へとたどり着いた。
「止まれ」
衛兵二人が持っている槍を交差して立ち止まる様に指示する。リーンが一歩前に出た。
「私達は姫って人に会いに来ました。城下町に来たら顔を出すようにと言われて」
衛兵が目配せして頷きあう。確認の為か一人の従者が城の中へと入っていった。
待つこと十数分。従者が戻ってくる。衛兵は何も言わず従者へと顎を向けた。ついて行けと言うことらしい。
ラティナ達は謁見の間控室に通された。豪奢な作り、壁に掛かった絵画が並べられている。
ラティナがラーサに目を向ける。
「それで姫に何を聞こう。こんなに立派な城に住んでいるんだもん。きっと色々知っていると思う」
「人間の世界の事。戦争は起きていないか。それを聞く為にはわたし達の正体を明かす必要があると思っている」
リーンが何か考えている様子でぼーっとしていた。
ドアがノックされる。
「入るぞ」
青年が入室する。ラティナには見覚えのない人間だった。
「リーンとやら」
現実に引き戻されて驚いたリーンが、あっと言う顔をして青年に頭を下げた。
「知り合い?」
「私達を助けてくれた人の一人」
ラティナ達が気を失っていた間にリーンが会った人間の一人だった。
「う、うんっ」
青年が咳払いをする。慌ててリーンは青年の前に進み出た。
「なんでしょう?」
「姫に何かあると大変だからな。荷物検査をする。武器や薬の類は持っているか? 持っているなら出してほしい」
人間大の武器は当然無い。しかし、小さなダガーを出して姫以外の人間に正体を表す気もなかった。
「ありません」
青年が手を叩く。侍女達が四人ほど入室してきた。ラティナとラーサが身構える。しかし、リーンが堂々としているのを見て気を緩めた。
「少しチェックさせてもらう」
青年が部屋を後にする。
「お時間は取らせません。少し静かにしていてください」
彼女達がラティナ達に近寄ってくる。
「きゃっ」
侍女達はラティナ達の体を隅々まで手で探す。荷物らしい荷物が無い事に安堵したようだった。
そして、何も持っていない事を確認し出て行った。入れ替えに青年が入ってくる。
「悪かったな。こっちだ」
(警戒しているのかな? だとしたら何でだろう?)
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