ラーサの過去2

 人間の町について、店に連れていかれた。


 値が付いた札がかごの前に置かれる。


「くそっ、開けろ、開けろっ」


 鳥かごの入り口の格子を掴んでラーサがどなる。


「だまってろ」


 鳥かごを揺さぶられる。片膝をついてラーサは泣いた。


 そこで見た人間は皆醜かった。容姿がではなく、顔が欲望に染まっていた。


「こいつをくれ。あっ!」


 ラーサが脱出できたのは奇跡に近かった。ラーサを買おうとして客が鳥かごを落としたのだ。衝撃と共に鳥かごの格子が歪む。隙間から逃げ出して羽が再生するまで地下に潜った。


「お腹、へったな」


 食べ物もなく、飢えて死ぬ寸前まで追い込まれた。


 ようやく飛べた時、地上に出て目にしたのは、町が戦火に覆われている処だった。


 醜い人間達は別の人間の国と戦争をしていた。すぐさまその場を後にした。今でもたまに夢に見る――


「わたしが人間を憎むようになったのはその時からだ」


「私達がピクシーの姿のままだったら、同じ事が起きるかしら?」


 リーンが辺りを見回す。


「わからない」


 言うなりラーサはピクシーの姿に戻る。そして、人間の町を滑空した。慌ててラティナ達が後を追う。


「まあ、珍しい。ピクシーのお客さんね」


「ママー、見て、小さいお人形さんが飛んでる」


 町の人々は穏やかでとてもピクシーをさらう様には見えない。ふと物陰からラーサ目掛けて飛び上がった人間が居た。両手でラーサを捕まえようとして空を切る。


「ちっ、いい金になると思ったのに」


 それだけ言って立ち去っていく。


 良い人も居れば、悪い人もいる。人間を少し観察して、ラーサは人気のない処へ降り、人間へと変化した。ラティナとリーンが駆けつけてくる。


「城とやらに行ってみよう」


 姫と呼ばれた人間がいる場所へ、ラティナとリーンにラーサは提案した。


「うん」

 

 ラティナはすぐに頷いた。城に行けば何か情報が入るかもしれないから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る