人間の章 (人とのつながり、三人のピクシーの少女達は)
人との邂逅
リーン視点
ダークピクシーの元を発ったリーン達はゆっくり歩きながら森を進んでいた。
人間の通る道に出くわした時、
「あ、あれ」
急にラティナが千鳥足になって森の中で倒れた。
「どうし、た」
ラーサも突然ふらついて、木に手をやる。
二人の異変に気付いたリーンはすぐさまラティナ達の頭を掌で触ってみる。
「熱はない。二人ともどうしたの?」
「分から」
そう言い残してラーサもその場で気絶した。意識を失っている二人の喉でみゃくを取る。
「どうしよう」
正常な状態で意識だけを失う。そんな症状にリーンは思い当たるものがなかった。
ふと車輪の音が遠くから聞こえた。
二人の胸に手をあてて人間へと強制変化させる。リーン自身も人間へと変化していた。
森の中を馬車が走っている。先導する馬に乗った青年の前方で漆黒の髪を背中まで伸ばした少女、人間に変化したリーンが馬の進路上で両手を振った。
馬の手綱を引いて止まる青年が馬車の御者へ停止する旨を指示する。
それを見たリーンは青年に駆け寄った。
「助けてください」
いきなりの言葉に何があったのか、と青年が訝しむ。
「どうした?」
「仲間が、友達が病にかかってしまって」
「病?」
一瞬馬車を振り返る。
「どうかしたの?」
馬車から気品のある少女が青年に語り掛ける。前方を見据えて、馬車から降りようとしていた。慌てた青年が彼女を制止する。
「姫、近寄ってはなりません。悪い病を持っている可能性があります」
「あら、よいではないですか。ちょうど白魔導士様もいる事だし」
丁度退屈していたのかもしれない。姫と呼ばれた少女は美しいリーンに興味がわいた様だった。
「ですが……」
口籠る青年に姫が笑いかけた。
「分かりました」
渋々青年が了承する。姫は馬車の客車へと一旦戻っていく。次いで白いフードを被った人物が降りてきた。
「その者はどこに?」
リーンが振り返る。道の脇に二人の少女が横たわっている。ラティナとラーサがぐったりとした状態で人間の姿のまま眼を閉ざしていた。
フードの男がラティナに近寄る。胸やら、熱やらをはかって、瞳孔を見据える。
「ふむ。これは病気ではないですな。魔力が枯渇している」
一目みただけでフードの男は二人の症状を看破していた。
魔力は気力を支えると言っていい。二人は無理をしすぎたのだろう。治す術がリーンにないのが問題だった。
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