想いはまだ……。
廻りは大破した家々やピクシーになったダークピクシー達が、シルフとの契約の歌を歌っている。ラーサを追って上空から落ちたピクシーは、大怪我をおってまだ無事な屋敷に運び込まれた。上層部なる者ももはやダークピクシーではない自分達がラティナ達に敵う訳もないからか、遠巻きに三人を見ていた。
中にはダガーを投げつけてくる者もいた。が、ラーサがジンの風で全て叩き落した。下を向いて悔しがる者、歓声をあげる者、逃げ出して戻って来ない者。様々だ。
「うっく。うっく」
ようやく泣き止んだラティナがリーンの胸に顔をうずめる。リーンもラティナを抱きしめて安堵していた。
ラティナ視点。
あれから一日が経った。日は既に昇っている。嫌々連れられて来た元ダークピクシー達はラティナ達の側で一夜を明かし。敵だった元ダークピクシー達は瓦解した家々や建物を見限って各地に散っていった。
怪我人はかなりの数にのぼる。しかし、死者が出なかったのは幸いだった。ラーサもリーンも殺さない様に立ちまわってくれていたのだろう。
ラティナがキノコを頬張る。その横で朝ごはんを食べているラーサが喉に木の実を詰まらせて咳き込んでいた。
疲れて果てて寝ていたラーサはようやく安心してご飯を食べられたみたいだった。牢屋で過ごした三日間は水いがい何も口に出来ていないと言っていた。リーンが横でラーサの背を叩いている。
朝ご飯の最中でも、廻りからシルフとの契約の歌が時折流れる。ピクシーに戻った者達の歌が森の中で木霊していた。
(人間に会いに行かないと)
思いは人里へ。
ほのぼのとした雰囲気の中で、ラティナはこの先に進もうと思った。リーンが居てくれる、ラーサが居てくれる。二人が側に居てくれる幸せを今はゆっくり噛み締め決意する。
食べたキノコを飲み込んだ時、ふと、リーンが自分にしてくれた事を微かに思い出して真っ赤に頬を染めたのだった。
「初めてのくちづけ、リーンとだった」
ぽつりと呟いてリーンの横顔を覗き込む。どうしたの? と言いたげな顔を見てふるふると顔を横に振る。
今はまだリーンを想う気持ちは姉妹を思う気持ちと同じだと思い込みながら自分の唇にそっとラティナは指を触れたのだった。
第二章 ダークピクシーの章 終わり
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続けて第三章 人間の章が始まります。ラティナ達がどうなっていくのか? 読んでもいいよと言う方が居られたら嬉しいかぎりです。
また3~4日に一度の更新となります。ちょっとストックが少なくなって来ていますが、頑張って行こうと思ってます。よろしくお願いします。
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