三人と言う力
――闇の中で誰かが問いかける。
お前は誰だ……。お前は何だ……。
(私はリーン。大切なラティナの親友だ!)
リーン……。
お前はいらない。いらない子だ。
(うるさいっ!)
お前には誰もいない。
ラティナ以外、心に壁を作り、嘘にまみれた相手との交流を流してきたリーンだったから、本当に心許せる相手がまだラティナしかいない。
壊せ。何もかも。
(うるさい!)
リーンの心に暗闇が生まれる。しかし、背筋を走る悪寒に立ち向かい。ラティナを取り戻す為に虚勢をはった。
リーンはラティナを感じる事で現実に留まっていた。
(ラティナを返してよ)
リーンの腕に力がこもる。抱きしめているラティナと言う存在の感触が強くなる。
おおおおぉっ。
理性を失わないリーンを悪意が闇色に染め上げる。しかし、ラティナとの絆以外何も持っていないリーンだったから、それを跳ね返す事が出来ていた。ラティナが半分瘴気を受け持ってくれているのも要因かもしれない。
(ラティナ。ラティナ)――
リーンはきつく抱き合いながらも意識を失いつつあった。正気でいられているのが不思議なほどだった。リーンの目が宙を泳ぐ。
「ラティナ、リーン」
真っ直ぐ駆け寄って来たラーサは急いでジンを呼び出し顕現させた。ジンがラティナとリーン、二人の頭に掌を乗せる。ジンにも瘴気が分かたれる。分かたれた瘴気はジンを通して周囲の皆に拡散されていく。その場にいる全てのピクシー達に嫌な記憶が呼び起された。一人で抱え込むには巨大すぎる瘴気だった。ジンをも狂わせる悪意にさらされていたラティナの目に光がともる。
「あ、たし」
ようやく落ち着いたラティナが、リーンを見てしがみ付いたのだった。
「うっ。うあぁーぁああん」
ラティナが泣きじゃくる。リーンもラティナを抱きしめた。
怖かっただろう。苦しかっただろう。だが、リーンがいることでその苦しさは半減した。そして今はもう一人仲間がいた。
「大丈夫。大丈夫だから」
「うっ、うっ」
ジンが満足そうにラーサを振り返った。
「危うく地表の大部分が灰塵に帰す処だったぞ。アートナ、恐ろしいものだな」
アートナとの契約の期間が浅かった故に、ラティナはまだその全ての力を引き出すに至っていなかった。それが幸いしたのだろう。
「ありがとうございます」
ふっと笑んでジンが姿を消した。ラーサはいつまでも泣き止まないラティナを見つめて、ぷっと噴き出していた。
「あはははは。これで終わったな」
リーンが楽しそうなラーサへ目を向ける。
「これからじゃない?」
「へっ?」
片手でラティナの頭を撫でてリーンが呟く。
「人間の問題が残っているでしょ」
「そう、だな」
ラーサも頷いた。
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