ピクシーへと戻す為に

「ねえ、リーン」


「なに?」


 ラティナがラーサに目線を向ける。


「ダークピクシーってどうやったら元のピクシーに戻るのかな」


 リーンとラーサが絶句する。


「だってこのままだと、リーンの帰れる場所が無くなっちゃう」


 ラティナの言葉に、数秒間二人は沈黙に包まれた。


「ったく、この子は」


 リーンに笑顔が戻っていた。


「もうあの里には帰るつもりもないけどね」


 そう続けてリーンもラーサへと視線を向けていた。


 ラーサが思案にくれている。


「アザゼルをどうにか出来れば」


「いいの?」


 ラティナがラーサに問う。それは元の仲間を本当の意味で裏切ることだった。


「わたしにはもう帰る場所なんてないからな」


 リーダーの地位を剥奪されて、殺されかけてやっとラーサはダークピクシーと言う者と決別する意思をもてたのだろう。そこには理想も夢ももう無かったに違いない。


「問題は三人しか味方がいないことだと思うの」


 リーンが今の問題点をあげた。5人を追い返すだけで手一杯だったラティナを見ればその戦力差に呆然とする。


「ダークピクシーは九十人いる。三十人はいやいやついて来た奴。戦闘でやっかいなのは十人くらいだ。六人構成で一グループ。リーダーが十人。リーダーのいない戦闘員が三十人だ」


 ラーサがダークピクシーの内情を教えてくれる。


「ラーサ」


 リーンが何か思いついたようにラーサを見つめた。


「そのいやいや付いて来たダークピクシー達って扇動出来ない?」


「どんな内容で?」


 リーンが考える。ラティナも考えたが味方にする方法は思いつかなかった。


「元のピクシーに戻れるなんてどうかしら?」


 彼女達だってダークピクシーなどになりたくなかったに違いない。いやいや仲間を殺させられてもう戻れない状況へと追いやられたのだろう。


「竜が、変化した私がピクシーに戻す術を知っている。竜が現れたら邪魔をしないか助ける様にって噂を流すとか」


 はっとなってラーサが考え込む。呟くように、

「リーンの言う事が出来るなら三十対六十。リーダーだったわたしにラティナ、リーンが居れば……。わたしがリーダー達十人を抑え込む。戦わずに逃げるだけなら可能かもしれない。リーダーを失った六十人をリーンと合わせて三十人でかく乱すれば、ラティナをアザゼルの居る場所へ送り込めるか」

 一気に言って、言葉を閉ざした。

 

 ラティナに考え付く問題としてはどうやって裏切者と言われたラーサが彼らの中に入り込めるか? だった。全体にはまだ裏切ったと言う事は浸透していないだろう。


 ダークピクシー達も尋問すらしないでラーサを即裏切ったと認定は出来ないと思う。

 となると、動くのは早い方がいいかもしれない。


「わたしが噂を流す。幸いわたしは他のピクシーの里を強襲する任務に就く事が少ない。わたしを知らない奴も多くいることだろう」


「分かったわ」


 リーンが頷いた。




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