新しい仲間

 去っていくダークピクシーにラーサが目を向ける。


「わたしは、裏切ってなんか」


 苦しそうに息を吐いて、その瞳は閉ざされたのだった。


「リーン!」


 ラティナの叫びに応えたリーンがラーサへと駆けよる。


 ダガーを抜いて傷薬をリュックから取り出した。水筒の水で傷と羽を拭い、ラーサの羽を切って傷薬と共に傷に張り付けた。羽は血を通さない。ピクシーの体液で出来ている羽はいずれ再生する。止血した後で残っていた包帯を使い切った。





 二日間、ラティナとリーンが交互にラーサの容態を見ていた。どうやら急所は外れていたらしい。廃墟の一室にラーサが横たわっている。


「ん……」


「目を覚ました?」


 ラーサの意識がやっと戻った。背中の痛みに顔を歪ませてラティナを見上げた。心配していたラティナが問いかける。それには答えず。


「一人にしてくれ」


 それだけ言って膝を抱えてまるくなった。


 全てを思い出したのか? 更に二日間ラーサは部屋に引きこもっていた。食事を置いても食べていない様だった。





 ラティナが水を運ぶ。やっとラーサが食事のきのこに手を出した。


「大丈夫?」


「大丈夫じゃない。でも戻れる処はもう無いんだな」


 ラーサの瞳から涙が流れ落ちる。涙を隠す様に目を腕で覆った。ラティナは何て声をかけていいか分からなかった。


 二人を無言の時が包み込む。


 声に反応したリーンが起きて来た。ラティナとラーサを見て、リーンが溜息をついた。


「で、どうするの?」


 腕で眼を覆っているラーサは無言だった。


「私達と一緒に来る? それともあのダークピクシーの処に戻る?」


 戻れる訳がないのはラティナにだって分かった。あのダークピクシーは真実ではないが、ラーサが裏切ったと言うことを誰かに伝えただろう。


「いいの?」


 その言葉に反応したのはラティナだった。まだ出会って日も経っていないラーサの事をリーンが受け入れている。今迄あったことが嘘や冗談ではないことを理解していたのだと思う。


「いい、のか?」


 ラーサが弱弱しくリーンの方を見ていた。


「いいも悪いもないじゃない。ラティナが心配している。それって敵じゃないってことでしょ」


 ああもうっと言いたげにリーンが再び溜息をついた。この日ラーサはラティナ達の側に身を置く事を同意したのだった。





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