ダークピクシーの章 (始まり、幕間から続く物語)

ピクシー発祥の地にて

ラティナ視点


 ピクシーの発祥の地である大陸の西にある森の中にその廃墟はあった。


 風の精霊と親和性が高いピクシーは元々森に居を構える事が多い。ただ、今ではこの場所も森の自然に飲まれている。そんな場所に二人は来ていた。


 上空から見下ろす景色は圧巻と言える。大きな木の廻りにピクシー達が住んだ家々が廃墟となって鎮座している。図書館らしき建物の入口には木の蔦が纏わりつき、荒廃した様子が見てとれた。


 ラティナが地面へと降り立つ。続いてリーンがゆっくりと図書館近くへと降り立った。


 リーンが図書館に目を向ける。


「リーンが見たかったのってここ?」


 ラティナが駆け寄った。


「ええ」


 国の歴史、魔法の書、図書館には情報が詰まっている。蔦をダガーで剥がし、リーンは入口をくぐっていった。ラティナが後に続く。


 中はほこりが付いた本がうず高く積もっている。棚に収まっている本の方が少ない位だった。


 つつーっとリーンが指を滑らせて、どの位ほこりが積もっているか確かめる。本を一冊取って中を確認していた。


「何かわかる?」


「童話ね。見たいのはこれじゃない」


 二人が奥へ奥へと進んでいく。突き当たりでリーンの足が止まった。ほこりに切れ目がある。四角くドアの様に線を描いていた。ほこりが無かったら気づいてないかもしれない。


「ここ。触れてみて」


 リーンが触れた壁をラティナも触る。魔力が微量ながら流れていた。手当たり次第にリーンが本棚の本をどかしていく。ラティナは壁のどこかに穴がないか確認した。


「あった」


 リーンがどかした本の一冊、その後ろにスイッチがあった。ためらわずにリーンが押す。


 無音で壁が前に迫り出し、横にずれて道を作る。


「ここって?」


 ラティナの呟きにリーンが振り向く。隠されている入口に二人は足を踏み入れた。


「禁書庫?」


 ぼろぼろになった本の残骸が散らばる空間があった。いくら見つけにくいとは言え、長い時間の間に発見したピクシーはいたのだろう。ところどころ空になった本棚が目立っていた。


「ラティナ。ちょっとここに居ていい?」


 リーンが興奮して椅子の上で本を一冊開く。


「いいよ。好きなだけいて」


 ラティナはそう言って図書館を後にした。





 森で木の実を拾いに行こうとラティナが浮いた。その時、

「!」

 泣きはらした様に目を真っ赤にさせたダークピクシーが一人、街中に佇んでいた。本当に偶然だったのだろう。彼女も動揺して、急いで目から涙をこすっていた。咄嗟にダガーに手をやろうとして彼女は両手をあげた。


「よおっ」


「リーダー……」


「ははっ、リーダーは解任されちまった。あんなに尽くしていたのに。ああ、お前とやる気はない。ダガーをしまえ」


 ラティナが腰から抜こうとしていたダガーから恐る恐る手を離す。


「なんでここに」


「故郷に帰って来るのはそんなにおかしい事か?」


 ラティナが驚く。


「故郷」


「わたしだってむやみやたらに殺そうとなんてしないさ。あの時は襲撃する予定の場所の近くだったからしょうがなかったんだ」


「なんでダークピクシーを増やそうとしているの?」


 あの時聞きたかった事が口をつく。彼女が石の上に座り、隣の石へ顎をしゃくった。


 ラティナが浮くのを止めて腰を下ろす。





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