ニーナ
「私はリーン。こっちはラティナ」
飛び上がりラティナの肩へ手をかけて、変化を解除していく。何も考えていなそうなラティナを後方へと庇う。それはいつもの癖だ。今ではラティナより強くないリーンだが、ずっとそうしてきた故の行動だった。
ルルの一件があったからか、ラティナも手放しで彼女を受け入れられないのかもしれない。リーンの後ろで少しだけ彼女の動向を伺っていた。
「で、何の用?」
「かったいなあ。同じピクシーなんだから、そんなにつんけんしなくたっていいじゃない」
少しだけむっとしたニーナは両手を軽く上げた。しかし、持ち前の明るさからか笑ってリーンの肩を叩いたのだった。リーンがそこでそうだったわね。と態度を乳化させる。
「嫌な事が起こり過ぎて警戒していたの。ごめんなさい」
人を見る観察眼は、廻りに気を配る事に長けているリーンだからこそ備わった資質と言える。(この人は敵じゃない)と。
「リーン、あなた秀才タイプね」
「えっ?」
「いい、リーン。あなたは何でも出来すぎる。だから教えるのが下手」
少しだけ見ていた割には彼女の指摘は的確だった。ラティナの肩を掴むとニーナがウインクをする。
「もう一度やってごらんなさい」
「うん」
ラティナが体に魔力を巡らせる。変な循環をニーナが矯正し正しい流れへと。
「ラティナは感覚的なのね、言葉で言うより実際にこうして体験させれば覚えると思うわ」
「やったーっ!」
そして人間大になったラティナが両手を上げて跳び上がった。それは嬉しそうに。
「たった一度見ただけなのに」
リーンが感嘆する。ちょっとだけ落ち込んで。だからと言ってラティナ一人で出来るにはもう少し時間がかかる様だったが。
その夜はお祝いだ。キノコや木の実をたくさんとってきて。葉っぱの上に並べる。彼女の話は楽しかった。このまま西に向かうとピクシー発祥の地がある事。図書室に禁書庫がある事。今は廃墟になっている事や稀にその地へ来る学者がいる事などなど。
語り、食べ疲れて、三人が思い思いの場所で横になった。ふとリーンが森の切れ目から覗く空を見上げて、
「行ってみたいな」
と、ぽつりともらしたのだった。
「行こうよ」
いつの間にか隣へ来ていたラティナが囁く。
「うん」
と頷くと、今自分達を縛る物は何もない事を再認識していた。
薄暗い森の中に朝日が降りる。空から降る光を浴びて起き上がり伸びをする。
「私はそろそろ行くわ。この先に恋がまってるの」
羽を羽ばたかせニーナが飛ぶ。二人も飛び上がって暫く上空で円を描く様に、別れを惜しむ様に空を翔けた。
『ありがとうー』
リーンとラティナの声が被る。ニーナは手を振って応えてくれた。
嬉しそうに語った恋と言う言葉は暫くの間、二人の胸に残るのだった。この出会いがあったから、二人の廻りにいるのは敵だけではない事を思い出させてくれていた。
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「いい人だった。お姉さんって言うのがいたらあんな感じだったのかもね」
閉ざしていた目を開けながらリーンが思い出す様に語った。
「今はどこかで恋でもしているかも」
「リーン」
「やば、ラティナが呼んでるから今日はここまでね」
手を振ってリーンがラティナの処へと駆けていく。
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作者です。ここで幕間が終わりました。次からは「ダークピクシーの章」を掲載していきます。また、3~4日に一回のUPになりますが、よろしくお願いします。
ラティナとリーンの行方はどこへと繋がっていくのか? 見続けて貰えると嬉しいです。(笑顔)
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