ルル
呆れたと言うよりは、アートナのせいでない事に安堵する。月明りが森の中を明るく照らしている。
取ってきたキノコを、無我夢中でがっつく彼女に怪我をした様子はない。飛ぶ気力もなく歩いてここにたどり着いたのだろう。
「これって食べれたっすね」
もぐもぐと口を動かしながら、二人に尊敬の眼差しを送ってくる。キノコと木の実を頬張る姿はまるでリスの様だった。
「あてはルルっす。よろしくっす」
「あたしはラティナ。こっちはリーン。よろしくね」
たらふく食べて満足したのかルルが横になる。いつの間にか寝息を立てて眠っていた。
その様子を見ていたラティナも大きい木の葉を布団にして横になる。リーンは少しだけ鋭い眼差しを向けて、木の枝の枕に頭を乗せたのだった。
リーンとラティナが寝静まる。今迄寝ていたルルがふと瞼を開いた。ごそごそと荷物から短剣を取り出す。
そして、
「っ!」
リーンがルルの両手首を押さえていた。ラティナの眼前で止まった切っ先が彼女は敵だと示している。
「なんでバレたっすか?」
「気づかないと思って?」
ぎりぎりと押さえた両手に力を加える。
「あなたは歩いてきた。ここに。まるで私達がいる事を知っていたかの様に」
そしてリーンは足でラティナの体を思いっきり蹴り飛ばし。短剣から遠ざけたのだった。ごろっと転がり。痛みでラティナがおきる。一瞬はてなと言う顔をしたラティナだったが、状況を飲み込むと嘘と言う顔でルルを見たのだった。
ルルが飛び退る。
対峙する三人。押さえられていた腕をさすり、彼女が話始める。
「ダークピクシーになりたかったっす」
ごくりとラティナが唾を飲み込むのを、リーンが見守る。
「ずっといじめられて育ったっす。あてはあての里が憎いっす。どうしても復讐したかったっす。たとえ同族を殺したとしても」
リーンが彼女に続きを促す。ただぼーぜんとしていたラティナなら少しだけ彼女の気持ちが分かるかもしれない。
「ダークピクシー達が去っていくのを偶然隠れて見てたっす。こっちにピクシーの化け物がいるって。彼女達を追い払う程の相手をあてが倒したら。きっと仲間に加えてくれると思ったっす」
ルルの瞳に涙が浮かぶ。悔し涙か、仕損じた事に対する涙かは分からない。
「そんなのよくないよ」
ラティナが訴えかける。
「じゃあっ! ラティナが協力してくれるっすかっ!」
ピクシーの里、二人の故郷ではない別の里を襲う。そんな事がラティナに出来る訳がないのは、リーンが良く知っている。沈黙が辺りを支配する。
「あてにはこれしかなかったっす」
そう言って彼女は踵を返すと森の奥へと去っていった。起きたラティナに敵う訳もない事は分かっていたのだから。
かけられる言葉も見つからず。二人はルルを見送るしかなかった。
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悲しい出会い。そして別れ。これからもこんな事が稀に起こるのだろう。
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