レラート・デ・ニンファ外伝、改め。幕間。リーンの日記より

新たな出会い(幕間の1)

 生ける者ゾアの一体アートナ。風その物であり、アートナの前では精霊の力すら働かない。精霊シルフは風に働きかける。しかし、風であるアートナがそれを拒めば、その影響下ではシルフと、いや、それが例え荒ぶる魔人と言われるジンであろうと、契約したピクシーは飛ぶことが出来なくなる。


 ピクシーには羽がある。しかし、人間の姿に酷似した体は精霊の力を借りる事で飛べる様になれる。


 これは二人のピクシーの物語。





「ん? 何書いてるのリーン」


「キャアっ!」


 近づいてきたラティナに絶対に見せまいとして、リーンが背中へと日記を隠した。


 汗を浮かべながらリーンが笑う。


「変なリーン」


 と言いつつ、今寝床にしている森の中へ。夕食の食材を探しに歩いていく彼女の姿を確認して、のりのりで書いていた日記をリュックへ隠す。



「気になる方はレラート・デ・ニンファの1を見てね」



 とこちらに呟きつつ、ウインクすると、リーンはラティナの後を追うのだった。

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リーン視点



「えいっ!」


 力んだラティナの掛け声が響く。目の前で羽ばたくリーンの体は1㎜も浮かない。


「これでどうだあっ!」


 気合を入れてラティナが魔力で力を抑え込でいる。金髪で隠れたおでこに汗が浮かぶのをリーンは見てとった。


 そしてやっとリーンの体が浮かび上がった。サラサラの長い黒髪が風に揺られて広がっていく。


「ラティナ偉い」


 ふわりと飛ぶリーンから感嘆の声がもれた。


 えへへへへと笑みがこぼれたせいで、ラティナの魔力が緩んでいた。リーンがあっと思った瞬間にはもう、リーンは墜落していた。


「もうバカぁー」


 涙目になってリーンが腰をさする。


 ダークピクシーの去った後、ここがキノコや木の実の宝庫だった事を知った。この森で二人は特訓をしていた。目標はアートナの力を制御する事だ。時折通りかかるピクシーが落ちてくるのを防ぐ為と、リーンが飛べる為にも。





 複数回のピクシー墜落事件は二人が神経を尖らせて防いでいたお陰で噂にはならなかった。しかし、いつまでもこのままでいる訳にはいかない。ラティナがどこにいるか、直ぐに分かってしまうからだ。リーンも飛んで墜落する事でやっとラティナを探し当てた。ラティナの前では飛べなくなるのを利用して、逆にそこに居ると言うのを知る事が出来る。


 もし、ダークピクシーと再び出会う事があればそれはかなりの危険を生むだろう。





 森に虫の声が響いていた。夜、ふと虫の合唱が途切れる。何かが近づいている。


「リーン」


 二人が見ている前で暗い森の奥から一人のピクシーが歩み寄り、倒れ伏した。慌てて二人が駆けより助け起こす。気づかなかった。またラティナのせいで落ちてきたのかもしれない。


 と、そのピクシーから盛大にお腹の音が鳴ったのだった。


「お腹、へったっす」




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