変転(リーン)

リーンサイド


「何してんだろう私」


 目覚めてから今日まで、かなりリーンは痩せてしまっていた。


 食事があまり喉を通らない。考えるのは自分のした事とラティナの行方だけ。


 この世界は小さいピクシーにとってあまりにも広かった。探すというのが無理なのだ。


 一人静かに。ベッドの中で。ラティナの事だけを考えている。


 そんな中、ドアがノックの音を響かせた。応えないのを知っているエスナが入ってくる。だが、それをリーンは見ていなかった。


「あなたには朗報かもしれないわよ。リーン」


 唐突にエスナが語る。


「墜落して、不思議なピクシーの少女に助けられた者がいるの」


(ラティナ!)


 弾かれた様にエスナへと振り向き、次の言葉をじっと待つ。


「里の北の町の更に北へダークピクシーが現れたのだけど。そこへ向かったそうよ。昨日」


「エスナ様!」


 濁ったかの様だった瞳が輝いていた。ゆっくりとベッドから立ち上がる。


「各種医薬品を私に持たせて下さい。包帯も」


 どちらを選ぶかなど最初から決まっていた。ラティナとの未来だけが全てだったのだ。


 ダークピクシーの方へ向かう。ラティナが何を考えたか瞬時に理解できた。


 よたよたと、ドアの方へリーンが歩く。一旦それを止められた。そして、エスナが振り向きながら言った。


「用意してくるから、食事をしておきなさい。分かっていると思うけど、あの子の側では飛べなくなるから、頭に入れておくのよ。それと、わたし達はしばらくこの里を離れるわ。避難場所は知っているわね」


「はい。ありがとうございます」




 かき集めてくれた荷物を背負い、再びラティナに会う為に里を後にした。おそらく、もう戻らない故郷に別れも告げず。





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