第15話 ダンジョン配信 1/3

「どうも、こんにちわ〜」


 次の日、俺はダンジョンにいた。

 ステータスをスワイプしていると、【ダンジョンに挑む】という項目があったのだ。それを選択すると、意識が遠ざかり……気がつけばダンジョンにいたのだ。


 そしてここは、以前挑んだ階層……つまり10階のボス部屋のようだ。見覚えのある空間が、目の前に広がっている。どうやらダンジョンでは、攻略し終えた特定の階層から続きを挑めるらしい。


(お、配信してんじゃん!!)

(待ってたぜ!! お前の配信!!)

(今回はダンジョン配信か!!)

(制裁配信も良いけれど、やっぱダンジョン配信は落ち着くな!! 唯一無二の個性を活かして、頑張れよ!!)

(ていうか、登録者100万人おめでとう!!)


 配信を開始した途端に、次々とコメントが送られてくる。さらにスパチャもドンドンと貢がれ、開始して1分も経っていないのに既に10万円以上も稼いでしまった。


 配信を開始した当初は、ほとんど誰もコメントがなかったというのに。たった3日で、ここまで変わるんだな。いやぁ、何というか……感慨深いな。


「とりあえず、今日はダンジョン踏破……は難しいにしても、行けるところまで行ってみようと思います。せっかくゴールデンウィークなんでね」


(マジか!! 最高だ!!)

(そう言えば、このダンジョンって何層まであるんだろうな。ゲームとかだと、やり込み要素では999層とかだけど)

(仮にそんなにあったら、マジで地獄だろ)

(期待してるぞ!!)


 コメント欄にもあった通り、このダンジョンはいくつまであるのだろうか。今のところ終わりは見えてこないため、予想も付けることはできない。ただあまりにも終わりが早く来てしまえば、ダンジョン攻略配信が出来なくなるので……あまりにも浅い層で終わってしまうのも困る。


「ただ……最低でも50層まではあるんだろうな」


 目の前には、以前と同じようにウィンドウが浮かんでいる。コメントを見る限りだと、このウィンドウは俺以外には誰にも見えていない様子だ。


【50層までダンジョンを進めてください】

【クリア報酬:状態異常無効】


 このウィンドウを信じれば、最低でも50層まではダンジョンは続くのだろう。そこで終わってしまうのか、はたまたまだまだ終わりは訪れないのか。その辺に関しては、さっぱりわからないのだが。


「何はともあれ、攻略するしかないか」


 今回は前回とは違い、万全の装備を整えてきた。背中には大きなリュックを背負い、中には食料や飲料水をギッシリと詰め込んできた。腰には以前の攻略で手に入れた、カットラスを差している。武器もその他も、完璧だ。


「じゃあみなさん、行きますよ!!」


 そして俺は、ダンジョン攻略を開始した。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



「ビビィィイイイイイ!!」


 雑談をしながらダンジョンを進んでいると、1匹の魔物が出現した。その魔物はバスケットボールサイズであり、見た目は……宙に浮かぶ目玉そのものだった。


(うわ、何だよ……キモいな……)

(大丈夫? BANされない?)

(若干グロいけど、大丈夫じゃね?)

(そんなにグロいか? 俺は全然平気だけど)

(強がんなよ、中学生キッズ)


 コメント欄のほとんどが、ドン引きしている。確かに宙に浮かぶ目玉なんて、それだけでグロテスクで気色悪いからな。俺もあまり直視したくない。


(こういう魔物って、目があったら麻痺したり石化するよな。そういうゲームが多いよな)

(確かに。ムサシも気をつけろよ)

(イケメンが石化……興奮するわ!!)

(異常性癖女だ!!)


 コメント欄の情報が正しいかは不明だが、注意しておいて損はしないだろう。確かに俺が攻略してきたゲームでも、こういった魔物は状態異常系の攻撃を得意としているものが、ほとんどだったからな。


 カットラスを構えて、目玉の前に立つ。

 さぁ、何を仕掛けてくるのか。状態異常攻撃か、はたまたシンプルに体当たりか。手も足もない形状なので、動きはさっぱり読めない。


「ビビィィイイイイイ!!」


 目玉は口もないのに大きく叫び、その瞳孔を大きく開いた。その瞬間、目玉から白い光が放たれた。


「おわッ!?」


 その光を、何とか避ける。

 危ない。当たっていたら、多分めんどくさいことになっていたな。


「ビィイ……」


(なんか、バテてない?)

(目玉にもスタミナってあるのか?)

(疲れ目って言葉もあるし、あるんじゃね?)

(疲れ目って、そういう意味だったのか……)


 何はともあれ、これはチャンスだ。

 俺はカットラスを上段に構え──


「やぁあああああ!!」

「びッ──」


 振り下ろした。

 目玉は両断され、地面にベチャッと落ちる。

 ……中角を思い出すな。


「ふぅ……」


(おぉおおおお!!)

(8888888888888)

(スゲェエエエエエエ!!!!)

(ムサシ最強!! ムサシ最強!!)


 目玉を倒すと同時に、コメント欄が沸く。

 これは……やはり悪くないな。

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