第5話 初配信 2/2
「コボォ!!」
「うぅ……!!」
ゴブリンよりも、ずっと速い。
攻撃速度も、敏捷性も。何もかもが。
攻撃を避けるのに、精一杯だ。
そして、攻撃力も高い。
鋭い牙、そして爪はゴブリンのナイフよりも、遥かに危険な代物だ。あんなのn引っ掻かれたり、噛みつかれたりすれば、出血多量で確実に死ぬだろう。
「ゴボォッ!!」
「ぐッ……!!」
(おぉ、マジで避けてんじゃんw)
(デブなのに、結構俊敏だなw)
(てか、スゲーCGだな)
「マジでそれな。本物みたいだな」
俺が必死に苦戦しているというのに、視聴者はノンキに笑っている。あるいは感心している。
CGだと疑うのはわかるが、もっと心配してほしいと思ってしまうのは、はたしてワガママだろうか。まぁ……俺が逆の立場でも、似た反応は示しただろうから、否定はできないが。
(初見です。なんか、スゴいですねw)
(おぉ、マジでスゲェ)
(よく動きますね)
(う◯こ)
だが戦闘を行ってから、視聴者の数が徐々に増え始めている。今では登録者数は20人を突破して、視聴者も50人以上だ。……荒らしが湧くほどに、人気になっている。
コボルトは強いが、これは良い前兆だ。
ここで魔法を使えば……もっと視聴者は増えるだろうか。もっと登録者数は、増えるだろうか。
「《
一瞬の隙を見て、コボルトに魔法を放つ。野球ボールほどの雷球は、コボルトの胸を打った。
「ゴォボッッッ!?!?!?」
バチバチバチと文字通り雷に打たれたように、コボルトは感電する。全身は一瞬で硬直し、少しの間動かなくなる。だがしかし、まだ生きている。
ゴブリンだったら一撃で倒せただろうに、コボルトのタフさに嫌気が指す。だがしかし、感電して動けない今は、絶好のチャンスだ。
「よし……!!」
コボルトから少し離れ、魔法を発動した。
「《
ボウッと燃え上がる火球は、コボルトの頭に命中する。油分を含んだコボルトの体毛はたちまち火が移り、やがて全身が燃え上がる。
「こ、コボッ……」
火ダルマになったコボルトは膝から崩れ、喉を掻きむしっている。未だに感電しているのか、燃えているというのに動きは緩慢だ。
火の中、コボルトは悶え苦しむ。
やがて──地面に伏した。
「勝ったか……!!」
俺は地面に置いてあるスマホに向かって、ガッツポーズをした。スマホの中では──
(え、何今の……?)
(魔法……? いや、CGか?)
(でも、CGにしちゃリアルだよな?)
(だよな、だったら……何なんだ?)
(何はともあれ、スゲェよ!!)
(確かに!! あの犬男を殺したんだから!!)
(チャンネル登録しました!!)
(俺なんて、通知までしたぜ!!)
気がつけば、登録者数は1000人に達していた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「ふぅ……やっと10層か」
その後、俺は配信をしながらダンジョンを歩んだ。どういうわけか、ダンジョン内ではスマホのバッテリーが消費されないので、ずっと配信を続けることができた。そのおかげもあって──
(10層って、さっき言ってた目的の場所?)
(ここまで来るのに、どれくらい魔物倒した?)
(初期から見ている俺が答えるけど、ざっと45匹だな)
(もう古参沸いてて草)
(うんち)
チャット欄が高速で流れていく。
視聴者の数はざっと1万人を超え、登録者数も同じく1万人を超えたからだろうか。まさか初回の配信で、ここまで視聴者数と登録者が増すなんて……思いもしなかった。
スパチャもかなり飛び交い、今では10万円近くも稼ぐことができている。たった数時間でここまでの大金を稼ぐなんて、バイト生活ではまず考えられなかった。配信者ってスゴいんだな。
「それにしても……ボス部屋感のある扉だな」
目の前には、鉄扉が佇んでいる。
厳かな雰囲気のある鉄扉には、まるで模様のような文字が書かれている。だが俺は国語と英語の成績が2なので、それが何を意味するのかはさっぱりわからない。
「みんなはこの文字が、何を意味するかわかる?」
(俺バカだからわかんねェけどよ、バカだからわかんねェわ)
(さっぱりわかんねェわ)
(うーん、エジプトのヒエログリフっぽいけど……なんか違うな)
(ナントカ文字っしょ!!)
コメント欄の識者に意見を伺おうとしたが、やはり答えは出なかった。地球には存在しない魔物なんて生物が生息しているダンジョンなのだから、未知の文章が出てきても不思議ではないか。
「まぁ……この先に何が待ち構えていても、臆することはないか」
そう呟いて、ステータスを開く。
────────────────────
【名 前】:
【スキル】:火属性魔法 Lv3
雷属性魔法 Lv3
氷属性魔法 Lv3
────────────────────
このダンジョン攻略の中で、俺は着実に強くなっている。最初は苦戦したコボルトが相手でも、今では一撃で屠れるのだから。
俺は強くなった。臆する必要はない。
深呼吸をして、鉄扉に手をかける。
「行くよ、開くよ!!」
(焦らすな、早く開けろw)
(おぉ!! 何が待っているんだ!!)
(お前の活躍、待ち遠しいぞ!!)
(う◯ち)
そして、俺は扉を開いた。
そこに待ち構えていたのは──
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