#016 告白

「たっ君、ごめんね。急に呼び出したりして」

「いえ、べつに……」


 昼の休み時間、僕は部長に人気のない場所に呼び出されていた。


「その、本当に、恥ずかしいんだけど、でも…………聞いて、ほしいの」

「はい」


 頬を真っ赤に染める部長。ここまでされれば僕だって鈍感系主人公じゃあるまいし、このあとの展開は予想できる。


「その、エロゲが、エロゲに! 興味があるの!!」

「あ、はい。ですよね~」

「え!? バレてたの??」

「いえ、そういうわけじゃ」

「??」


 どうやら僕は、勘違い系主人公だったようだ。いや、主人公どころか平凡なモブキャラなんだけど。


「その、美少女ゲームとか、昔から好きで…………それで、やっぱりその先はってなると、パソコン版じゃない?」

「そうですね。パソコン版なら、カットされたシナリオが見られるでしょうね。それで、確認なのですが……」

「??」

「美少女ゲームと言う事は、男性向きで、宜しいのでしょうか?」

「あ、うん。出来れば女の子とイチャイチャできるヤツで」


 考えてみれば人見知りの部長が、慣れた相手とは言え恐怖の対象に惚れるはずが無い。


 それはさておき、男性向け18禁ゲームをプレイする女性は意外な事に多い。それは根底に生物学的な社会問題が…………あるかは知らないが、声優やストリーマーを中心にその手の下ネタや、二次元美少女好きを公言している女性は多く、そういった界隈を見慣れた僕としても偏見は無い。


「話は、聞かせてもらった!」

「「!!?」」


 そこには雑草を口に加え、おもむろに腕を組む師匠の姿があった。


「その、私もやりたいです! エロゲっ!!」

「わあ、シャルちゃん、声が大きい!」


 まぁ、師匠もそうだよね。一瞬、僕の事が気になって…………なんて思ったけど、単純に興味本位で後をつけてきたようだ。


「いや、やりたいなら自己責任で、こっそりやれば、いいんじゃないですか? ノベル系ならそれこそノートでも動くでしょうし」


 そういえば部長は、すでにノートパソコンを持っているのだから、やろうと思えばいつでも出来るはずだ。もちろんソフトを買うのは大変だが、それこそ体験版や廉価版のダウンロード販売もある。


「そうだけど、年齢制限とか、クレジットカードとか……」

「あぁ、あと! 日本に来ると、(海外系の)エッチなサイトが見れなくなるんです! 何とかしてください」


 何となくだが、事情に察しがついてきた。パソコンやスマホにはアダルトコンテンツを非表示にする機能があるらしいが、それとは別に、サイト側もさまざまな制限をかけている。分かりやすいのは、サイト入室時の年齢確認だが、それ以外にも使用中のアカウント情報やIPアドレスによる自動遮断があげられる。


「あぁ、うん。これは独り言なんだけど……」

「「??」」

「このまえリンクーのアカウントを、間違えてプラス10歳で作ったら、なんか登録したサイトに見慣れないピンクのページが追加されたな~」


*この物語はフィクションです。年齢制限を守り、正しくコンテンツを楽しみましょう。


「「おぉ、そんな手が!?」」

「あと、支払いはコンビニでプリカを買うと、クレジットカード感覚で使えたな~」

「おぉ、さすがはたっ君。男の子だね~」

「ぐっ」

「それで、エッチなサイトは!?」

「それは、無い事もないけど、必要な機材とか、ちょっと難易度が高いかな?」

「そ、そんなぁ~」


 VPNが必要なサイトって、いったいどこを見ているのだろうか? 聞いたら教えてくれそうな気もするが、危険なので聞かないでおく。


「それに、その手のサイトは著作権的にアウトな可能性が高いから、ちゃんと権利者が直接運営している所を利用した方が良いよ」

「うぅ……」


 金銭的に厳しいことや『海外の法律的にはOKだった』ってことはあると思う。しかし、日本で暮らす以上は日本のルールを逸脱するのはお勧めできないし、何より創作活動に挑戦する者として権利者に正当な対価が支払われて欲しい。


「まぁ、どちらにしてもゲームや動画視聴はほどほどにした方が良いと思うよ。僕はそれらを生み出す側に立ちたい…………と、思っているから」

「「…………」」


 実際にどうするかは本人次第だが、生活に支障をきたしていると感じたら、その時はさり気なく止めてあげよう。




*この物語はフィクションです。年齢制限を守り、正しくコンテンツを楽しみましょう。

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