#015 第二美術部専用PC⑤
「ちょっと、独特の雰囲気があるわね」
「なんだかワクワクしますよね!」
「え? いや、そういう意味じゃ……」
ジャンク品コーナーを前に引きつった表情を見せる委員長に対し、師匠は興奮気味。師匠はパソコンには詳しくないようだが、いわゆる電気街的な雰囲気がいいのだろう。
「…………」
「何かありましたか?」
部長の視線がレトロゲームコーナーに向けられている。このお店はゲームショップでは無いので近年のタイトルは置いていないものの、ゲーム機本体や対象年齢高めのガチなレトロゲームはレトロホビーの延長で取り扱っている。
「いや、その…………パソコンゲーム、無いかなって」
「あぁ~、無いと思いますよ。パソコンゲームのパッケージって嵩張るし、入っても専門店にまわしちゃうんじゃないかな?」
軽くはぐらかしたが、ぶっちゃけ『パソコンゲーム=エロゲ』みたいなところがあるので18禁コーナーが無いなら望み薄だ。もちろん一般のパソコンゲームも存在するが、市場規模が小さいので管理の都合でエロゲと一括りにされるパターンが多い。
いや、中学生の僕がなぜそんな事を知っているのかって問題は、できれば触れないでもらいたい。
「そっか~。あったら、買いに来るのに…………えr……」
「はい?」
「いや、なんでもないから!」
「はぁ……」
なにか聞こえた気がするが、たぶん気のせい。そんな事よりも本題だ。まだ下見の段階だけど、この下見でカンパの目標金額が決まる。
「けっこうピンキリですね。これなんか、普通のパソコンが買えちゃいそうです」
「そのあたりのモデルは、見なくていいよ。どうせ買っても使えないし」
「高いなら、良いものじゃないのですか?」
「一概にそうとも言えないのがパソコンなんだ。……。……」
パソコンコーナーには、動かないジャンク品から高価なメーカーパソコンまで節操なく取り扱われているが、『性能=価格』ではないのが奥深いところ。それと、基本的にこのお店はお値段高めなので掘り出し物以外はスルー安定だ。
「それじゃあ、同じ値段で新品を買った方が高性能なの? それっておかしくない??」
「それは、性能だけで比べられるものじゃないから。それこそ、僕たち的には傷だらけでも動けばいいわけだし」
「それは…………そうか」
委員長の顔が『こんなのボッタクリじゃん!』と言っている。まぁ、完全な間違いでもないのだが、パソコンは世代交代による性能向上が早く、個人でもパーツ単位で安価に性能アップできる世界なので、一般の家電とは事情が異なるのだ。
「難易度は上がるけど、従兄の兄さんに頼んだら新品でも6万円くらいでそこそこのパソコンを用意してくれるよ」
「なんで、パソコンを買うのに難易度が必要になるのよ」
「それは、まぁ、どこまで不要な部分を省けるか。その、ほら、"ダイエット"みたいなものだよ!」
「「なるほど……」」
いや、適当に口から出ただけで、自分では『何を言っているんだ!?』って感じなんだけど、まぁ、納得してくれたならそれでいい。
「出来ればもっとあった方が良いけど、ようするに6万円くらい集められるようなら兄さんに頼った方が良いから…………それ以下でって時は、このあたりを狙っていく感じになるよって話」
視線の先にあるのは1~4万円のコーナー。型は古いが一応動くので、ここが最低限のスタートラインになる。
「でも、このパソコン、大丈夫? たぶん、私のパソコンよりも、古そうだけど」
ノートパソコンを所持している部長は、分からないながらも字面から自分のパソコンよりも古いと見たようだ。もちろん、無改造ならノートよりも劣るだろうが……。
「そこはパーツ交換でなんとか出来るから。基本的にメモリーとストレージをなんとかすれば、古くても大体動くし、何よりOSとオフィスが入っているのがポイントで」
「えっと、よく分からないけど、それじゃあ交換する事前提で、安いのを買って、余った予算でパワーアップしていくのね?」
「そういうこと」
「ジュン、その……」
「「??」」
「部のパソコンとは別に、私のも、その、欲しいのですが」
「あぁ、まぁ、そうだよね」
師匠はスマホとタブレットの二刀流だが、引っ越しの都合からくる大物禁止(パソコンなど)は解除されている。部活動自体は部室でやりたいようだが、それとは別に、やはり自分専用パソコンがあると何かと都合がいいだろう。
「そ、それなら…………いや、なんでもない。忘れて」
「ミサオも、パソコン欲しいですか!? それなら、一緒に買いましょう!!」
「いや、だから買わないって!」
「あぁ、その、お金は無いんだけど、私も、何とかしたいかな……」
委員長はともかく、動画編集がしたい部長のパソコンが低スペックノートなのは問題だ。ノートでもメモリーとストレージは交換できる場合もあるが、できればそこに加えてグラフィックボードも交換したい。もちろん、ノートでは実質不可能なのだが。
「そこはやっぱり、予算しだいかな?」
「だよね。はぁ~~」
そんなこんなで、実物を見ながら大体のパターンと、その予算について認識を共有した。たぶん、出来ていると思う。
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