Ep.15"車輪のよう"
路地裏に引っ張りこまれたので、男どもにカツアゲされるかと思ったら、泣いて仲良くなる方法を教えてくれと頼まれた。逆に金払われた。
俺も金払って美人さんと仲良くなる方法を知れるなら知りたいよ。
さて、もうすぐ18時になるので晩ごはん食べたら妹達に“三日月のネックレス”を渡してから、アイミーさんに渡すアクセの練習をするか。
☆ ☆ ☆
今日は妹は寝てなかった。平和で何よりだ。
妹から聞いたんだがつい先程初めて大蛇のフィールドボスが倒されたらしい。因みにボスが初撃破されたらPNがワールドアナウンスで紹介されたり、初撃破報酬が貰えるらしい。妹は1番になれなかったことを非常に悔しがっていた。まぁ、頑張れとしか言いようがないな。
妹達とは生産ギルドで待ち合わせをしている。あのネックレスは安定して作れるようになるまで秘匿させて欲しいからだ。
「やっほー。お兄さん」
「アキャリか。他の皆はどうした?」
「私は真っ先に死んだだけだよー」
話を聞くとフィールドボスの手前まで来ていたので八つ当たり気味に挑んで来たらしい。用意もほぼしていなかったのでもうそろそろ全員死に戻りしてくるそうだ。
という話をしていたら3人纏まって転移してきた。ギャル子がプンスカしている。
「あーもうっ! あの蛇何なの!」
「まあまあ、今回は何も準備してなかったわけだし」
「でも! 蛇がダンゴムシになるなっつーの!」
「でも蛇はとぐろ巻くよ?」
「カーマイン。普通の蛇は車輪のように転がってこないよ」
……ほんとに蛇の話だよな? まぁいいや。
「ここで話しててもアレだから中入るぞ」
あーだこーだ言ってる彼女たちに一言言ってから中に入る。後から慌てたように入ってきた。
「アイミーさん、個室貸してくれ」
「わかったわ。はい、これ鍵ね。左通路の1番奥の部屋よ」
「わかった」
ちなみに生産ギルドは左通路、右通路があり、左通路は商談のための個室、右通路はいつも使っている色んな作業場となっている。
「料金は1000Gよ。後でいいから払ってね」
「後払いでいいとか珍しいな。ありがとう」
妹達は生産ギルドに入ったことがなかったのかキョロキョロしている。
部屋に入り4人を招き入れた後に扉を閉める。机を挟んで席に着くとまず妹が口を開いた。
「それで兄貴、例のブツは持ってきた?」
「もちろんだ。誰にもバレていない」
「何その悪役ムーブ。てかカーマインはこいつの報酬何か知ってるの?」
「知らない」
ギャル子がガクッとコケた。
「さて、今から見せるものは今回の報酬だ。俺はまだ安定して作れないから広めたりしないで欲しい」
「何? 毒耐性?」
「正しくその通りだ」
「ふん。まぁまぁね」
おいギャル子、テメェは何様だよ。くれてやらんぞ。
「思ってた効果とはちょっと違うが要望にはそってるいるし、それよりも少しは価値のあるものだと思っている。それがこれだ」
そう言って実物を机に置く。4人がそれぞれ手に取り効果を確認していく。効果を見たのか驚いたようにこちらを見てくる。
説明してもいいか、と聞くとこくこく頷いてくれた。
「まず謝らせてくれ。俺は自分が作ったものの性能は自分で使って試さないと落ち着かないんだ。だから少し使ってしまった。すまない」
4人とも気にしなくていいと言ってくれた。ありがたい。
「性能について説明しよう。まず“クリティカル(微)”これは文字通りクリティカル発生率が高くなるということだ。体感的には0.5%ほど高くなっているように感じた。それと確定でクリティカルになる部位、モンスターのウィークポイントが若干範囲が広がった。ただこれは気にしなくてもいいくらい誤差の範囲だった」
マリリンによるとクリティカル発生率が高くなるアクセサリーはまだ見つかっていないという。だからそれだけでも価値があるんだとか。
「次に“キノコ・蛇毒耐性(極微)”なんだが、試して見た限りは麻痺毒、火傷毒、睡眠毒、そして皆さんお望みのただの毒が効きにくくなっていた。状態異常になる確率が低くなる上になったとしても治る確率が上がるようだ。検証の結果、どちらも2%ほどの上昇だったけれどね。まぁ、2%と効果が薄いことは目を瞑ってくれると」
「ちょ、ちょっと待って」
「どうしたギャル子?」
「あんた、それどうやって調べたの?」
そんなことか? そんなの決まっているではないか。
「森の中にキノコあるだろ。火傷毒はカエンタケ、麻痺毒はシビレタケ、睡眠毒はネムリタケ普通の毒は蛇に噛まれた。なんか悪かったか?」
「あんた、確かめるためという理由だけでそんな無茶したの?」
何が無茶なのか分からな……あっ。すっかり失念してたけど毒とかに対抗する手段がないから毒耐性のアクセを求めてきたのでは? ボスが毒を使うのなら毒消しのひとつくらい存在してると思うけどなぁ。後で探してみよう。まぁ、俺は【治癒体質】があるからなんともないけど。
「すまない。別に無茶をしたかった訳では無い。俺が作った物を使ってくれる人に何かあって欲しくないからな。それに」
「それに?」
「俺に状態異常は効果が薄いからな。全然無茶してない」
「それってどういうこと? 【状態異常耐性】みたいなスキルを持っているってこと?」
別に間違ってはないが合ってもないな。まぁ、そういうことにしておきますか。
「そんなとこだ。話を戻すが報酬はこれでいいか?」
「え、あ、皆いい?」
ギャル子が確認を取ってくれるがダメとか言われたら泣くぞ?
「私は問題ない」
「そもそも期待以上のもの出してきたしねー」
「兄貴がくれるものならなんでもいい」
妹のそれは違う気がするがよかった。
「こんなことを聞くのは野暮かもしれないけどさ」
「どうした?」
「これって買ったらいくら位するの?」
「おっちゃんは、あ、販売所の店員は8000Gするって言ってたな」
「え、8000?」
「おう、8000」
……なんかおかしいか?
「それって今プレイヤーで使われてるアクセの中での店売り最高金額を超えているのでは? と言うか自分で売ったりオークションすればその10倍どころじゃない値段つくわよ。そうなればしっかり最高金額更新ね」
……え? そんな馬鹿な。と思ったがそもそも追加効果が2つ付いているアクセサリー自体無かったらしい。しかも2つとも初めて見る追加効果だ。
空気が凍った。皆の視線が1度“三日月のネックレス”に向いて白々しく目を逸らした。
「えっと、追加でお金払った方がいい?」
「いや、そのまま持って行ってくれ。俺の事を口外してくれなければいいから」
「いや、でも」
「そんなに金払いたいのならここの貸出料払ってくれ。1000Gだから」
「でも……いや、分かった。1000Gだね。払うよ」
こうしてグダグダした感じで報酬の受け渡しは終わった。
皆さん今から準備をして突撃しにいくらしい。頑張ってください。応援してます。
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